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アスベストの禁止は2006年から!いつ以降から法改正されたのか解説
投稿日:2025.02.05
アスベストの禁止は2006年から!いつ以降から法改正されたのか解説
アスベストは、西暦2006年(平成18年)法改正され全面禁止となりました。具体的には、アスベストを0.1%を超えて含有するすべての製造・輸入・譲渡・提供・使用が禁止されました。
参考:アスベスト全面禁止|厚生労働省
この記事では、アスベストが全面禁止となった時代背景やいつから禁止と言われるようになったかを解説します。
最後まで読めば、アスベストがいつからいつまで使われたのか、なぜ禁止になったのか理解できるでしょう。
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アスベスト禁止に至る日本の法規制の流れ
日本におけるアスベスト規制は段階的に強化されており、その背景には社会的・国際的な動向と深刻な健康被害の発生があります。
アスベストが全面禁止されたのは2006年ですが、それ以前にも一部規制されることがありました。主に以下の年代に大きな変化がありました。
- 1960年代:じん肺法の施行と初期の規制
- 1970年代:特定化学物質等障害予防規則の導入
- 1995年:アスベスト含有建材の規制開始
- 2004年:規制強化の背景と進展
- 2006年:全面使用禁止への移行
- 2012年:猶予措置の撤廃と完全禁止
1960年代:じん肺法の施行と初期の規制
1960年代には作業現場の粉じん対策を主眼としたじん肺法が施行され、アスベストによるじん肺の発症リスクも少しずつ認識されるようになりました。
この時期はあくまで労働者の労働環境改善が主眼であり、アスベスト自体の危険性を大きく取り上げるまでには至りませんでした。しかし、粉じんによる慢性的な疾患が増えたため、アスベスト対策の必要性が徐々に議論され始めます。
1970年代:特定化学物質等障害予防規則の導入
1971年には特定化学物質等障害予防規則が施行され、吹き付けアスベストなど高濃度なアスベスト製品の使用が原則禁止となりました。これは、直接吸い込みやすい形状で散布されるアスベストが特に危険視されたためで、当時の建設現場では大きな転換点となりました。しかし完全な使用プラスチックへの代替も進まず、広範囲での規制にまで至るには時間がかかったのが現状です。
1995年:アスベスト含有建材の規制開始
1995年にアモサイトやクロシドライトなど、特に危険度が高いとされるアスベストの製造・輸入・使用が禁止されました。これによって、アスベスト含有建材から代替建材への転換が業界全体で進められ、工事現場や製造ラインでも対応が求められます。ただし全面的には禁止されていなかったため、ほかの種類のアスベスト含有材料が一部残っている状況でした。
2004年:規制強化の背景と進展
2004年前後にクボタショックと呼ばれる大規模な健康被害報告が社会的な注目を集め、法整備が急激に加速しました。大手企業の工場周辺で中皮腫や肺がんなどの患者が続出し、企業のみならず行政の対応も大きく問われることになります。これを機にアスベスト含有製品の自主回収や、さらなる規制強化の動きが高まったのです。
2006年:全面使用禁止への移行
2006年には、原則としてすべてのアスベストを含む製品の製造・輸入・使用が禁止となりました。これにより、法律上は日本国内でのアスベスト利用がほぼ不可能となり、本格的な「アスベスト禁止」がスタートしたといえます。ただし、既存の建築物やストックされていた材料の問題など、現実の課題はまだ多く残されました。
2012年:猶予措置の撤廃と完全禁止
2012年には一部製品に適用されていた猶予措置も撤廃され、名実ともに日本国内でのアスベスト使用は完全に禁止されることになりました。代替素材の普及が進んでいたこともあり、工業分野では大きな混乱は発生しなかったものの、解体工事などの現場ではアスベストを含む建材の除去や安全対策がいっそう重要視されるようになりました。
アスベスト禁止の理由と背景にある健康被害
なぜアスベストがここまで厳重に規制されるようになったのか。その主な理由は、深刻な健康リスクの存在にあります。
アスベストは吸い込んだ際に繊維が肺に蓄積し、長期にわたる潜伏期間を経て深刻な疾患を引き起こす可能性があるため、使用の禁止は緊急課題となりました。特に産業の現場では職業性曝露による罹患率が高く、作業者だけでなく周辺住民にもリスクが及んだのです。こうした事例が社会問題化し、法規制へ一直線に進む大きな一因となりました。
アスベストが過去に使用されていた物を解説
過去にアスベストが使用されていたものは主に以下があります。
一般的には、建築物に使用されていると考えられる方が多いですが、家庭用品にも含まれる場合があります。
家庭用暖房・調理機器の断熱部材(石油ストーブ・給湯器・レンジ・オーブン内部)
家庭用機器でも、旧型の石油ストーブや給湯器、オーブン・レンジの高温部には、断熱や遮熱目的でアスベスト系のシート・ボード・編物が用いられていた例があります。外観からの判別は難しく、分解時や錆び・劣化で繊維が露出すると飛散リスクが上がります。
古い機器の撤去・解体は粉じんを出さない方法で行い、疑わしい場合は専門調査に調査を依頼しましょう。
アイロン台カバー・耐熱マット・鍋敷きなどの耐熱繊維製品
高温に触れる生活雑貨の一部(旧式のアイロン台カバー、アイロン用当て布、耐熱マットや鍋敷き等)には、耐熱強化のためアスベスト混繊品が流通した時期があります。
布地に見えても極細繊維が混在するため、切断・洗濯・摩耗で微細粉じんが出るおそれがあります。年代不明・劣化品は使い続けず、新品の非アスベスト品へ更新するのが安全です。
吹付けアスベスト(耐火被覆・断熱材・吹付けロックウール)
鉄骨の耐火被覆や機械室の吸音・断熱目的で、1960〜70年代を中心に吹付けアスベストが多用されました。見た目はモルタル状・綿毛状で、劣化や振動で容易に飛散しやすい高リスクな建材です。
封じ込めや囲い込みがされていても経年で効果が低下することがあるため、改修・解体前は必ず事前調査と適切な飛散防止措置が必要です。
スレート・成形板(屋根材・外壁材・押出成形セメント板)
屋根の波形スレート、外壁サイディング、押出成形セメント板などの成形板にも、強度・耐候性向上の目的でアスベストが混入した製品が広く流通しました。通常使用時は非飛散性ですが、割れ・穿孔・切断といった機械加工で粉じん化します。
築年や製品名を手掛かりに専門調査・適正処理の手順に従うことが重要です。
園芸・DIY向け耐熱ロープ/シート/ガスケット材(旧型製品)
薪ストーブ周りのシールロープ、耐熱シート、配管用ガスケットやパッキン等、園芸・DIY分野でも旧型品にアスベスト繊維を含むものがあります。
切断・穴あけ・研磨で容易に繊維が解離するため、作業時のリスクが高くなります。未開封の古在庫や年代不明の部材は使用を控え、非アスベスト製品への更新を検討してください。
2006年以降も注意すべき3つのポイント|禁止後でもアスベストに要注意
2006年に国内でアスベストの新規使用は原則全面禁止となりましたが、リスクがゼロになったわけではありません。
必要に応じた分析で疑わしいものを確認する姿勢が重要です。含有が判明した場合は飛散防止措置と適切な処理を徹底し、違反や不適切処理による罰則・健康被害・信用毀損のリスクを回避しましょう。
既存建物・設備に残るアスベスト建材
2006年以降は新規使用が禁止されていますが、禁止前に施工された建物・設備には吹付け材、成形板(スレート・押出成形セメント板)、配管保温材、パッキン等がそのまま残存している可能性があります。
非飛散性建材でも、割れ・穿孔・切断・解体で粉じん化しやすく、劣化や漏水で飛散リスクが上がります。
改修・解体・設備更新の前には、有資格者による事前調査と、必要に応じた封じ込め・囲い込み・除去、適正な処理まで一連で計画することが重要です。
旧在庫・中古流通品のアスベスト混入
倉庫に眠る旧在庫やリユース市場に出回る中古品の中には、年代が古い断熱ボード、耐熱マット、ガスケット、配管保温材など、アスベストを含む可能性がある製品が残っていることがあります。
ラベル欠落や型番不明で判別がつかないケースも多く、切断・研磨・高温使用で繊維が解離しやすい点に注意が必要です。年代・型式が不明な耐熱・断熱部材は使用を控え、メーカー資料や分析で確認のうえ、非アスベストの代替品へ更新を検討してください。
輸入品・個人輸入のアスベスト混入
国内では原則全面禁止でも、海外では一部で製造・流通が続く国があります。工業用パッキン、ブレーキ・クラッチ用摩擦材、耐熱布・ロープ、断熱板などで、輸入品や個人輸入品にアスベストが混入していた事例が指摘されています。
購入時は「アスベスト非含有」の証明(SDS・メーカー証明など)を確認し、出所不明・極端に安価な耐熱材は避けるようにしましょう。業務用途での調達は、国内規制・通関要件と合わせて安全データを必ず確認し、疑わしい場合は使用前に分析調査を行うことが大切です。
そもそもアスベストとは何か、その性質と使用用途
アスベストとは、天然に産出する繊維状の結晶構造をもつ鉱物繊維の総称を指します。繊維が非常に細く、曲げにも強いため、さまざまな形状に成形しやすいのが大きな特徴です。
また、耐熱性や耐薬品性にも優れることから、過去には火災リスクを低減する断熱材として重宝されました。
しかし、この繊維を吸い込むことによる健康リスクが明らかになるにつれ、その利用価値以上に人体への影響が深刻視されるようになっています。
まとめ:アスベストが完全に禁止されたのは2006年
日本では、アスベスト(石綿)は段階的規制を経て2006年9月1日に原則全面禁止となりました。労働安全衛生法施行令の改正により、含有率0.1%を超える全ての製品の製造・輸入・譲渡・提供・使用が禁止されたことを意味します。
以後、新規にアスベストを使った建材や製品は出回らない一方、2006年以前に施工・製造された建物や機器、部材は今も各地に残存しています。
解体・改修・売買時には事前調査(有資格者によるアスベスト調査)が不可欠で、劣化や破損時の飛散防止、適正な除去・処分が求められます。「2006年で終わった話」ではなく、既存のアスベスト製品への安全対策が課題です。