アスベストの解体費用に補助金は使用できる?相場や各都市ごとの補助金を紹介
投稿日:2025.07.03
アスベストの除去工事には高額な費用がかかることも多いため、自治体の補助金制度をうまく活用することで経済的負担を軽減できます。
しかし、補助内容や対象工事の条件は地域によって異なるため、事前の情報収集が大切です。本記事では、東京都内の主要区および広島市の補助金制度の詳細を比較しながら紹介します。制度の概要や注意点をわかりやすく解説しているので、アスベスト解体工事を検討している方はぜひ参考にしてください。
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アスベストに関する2種類の補助金を解説
アスベストに関する2種類の補助金は以下のとおりです。
- アスベストの調査費用に対する補助金
- アスベストの解体費用に対する補助金
アスベスト対策には、大きく分けて「調査費用」と「解体・除去工事費用」の2つのフェーズがあります。これに対応する形で、補助金制度も2種類に分かれており、それぞれ申請方法や対象要件が異なります。
この見出しでは概要として、両制度の違いや活用時のポイントをわかりやすく整理します。
アスベストの調査費用に対する補助金
建物にアスベストが含まれているかどうかを確認するためには、専門業者による「事前調査」や「分析調査」が必要です。こうした調査にも補助金が活用できるケースがあります。
たとえば、厚生労働省の補助金制度(民間建築物石綿対策事業費補助金)では、調査段階にかかる費用を対象に、最大25万円/棟(※地方自治体経由)の支援を受けることが可能です。
この補助金は、建物が1970年代〜1980年代以前に建てられたもので、吹付けアスベストなどの使用が疑われる場合に適用されます。
なお、より詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
アスベスト調査費用の相場と補助金のご紹介
アスベストの解体費用に対する補助金
アスベスト含有建材を除去・解体する際には、国や自治体から補助金を受けられる制度があります。
「吹付けアスベスト」や「含有吹付けロックウール」の除去、封じ込め、囲い込み工事が対象です。補助率は原則、自治体補助額の1/2(全体の1/3以内)で、申請は工事着手前に行う必要があります。自治体によっては独自の補助制度も上乗せされているケースがあります。
次の見出しから解体費用の補助金を詳細に解説していきます。
アスベスト解体・除去工事に関する補助金の詳細
アスベストが含まれる建材の除去や封じ込め工事は、健康リスクや法的責任を伴うため、専門業者による慎重な対応が求められます。これらの工事には高額になるケースが多く、負担を懸念する声も少なくありません。
そこで活用したいのが、国や自治体が用意している補助金制度です。補助対象となるのは、主に吹付けアスベストやアスベスト含有吹付けロックウールの除去・囲い込み・封じ込め工事であり、補助率や申請条件にも明確な基準があります。
この見出しでは、補助制度の対象範囲や支給金額、申請時の注意点をわかりやすく整理して解説します。
補助金の対象となる建材・工事内容とは?
アスベスト除去に関する補助金制度は、吹付けアスベストおよびアスベスト含有吹付けロックウールに限定して適用されます。対象工事は、これらの建材を使用している住宅・建築物における以下3つのいずれかになります。
- 除去
- 封じ込め
- 囲い込み
スレートや成形板など他のアスベスト含有建材は対象外のため、事前調査で使用されている建材の種類を確認することが必要です。補助対象は、労働安全や大気汚染防止を目的に、法的にも厳しく管理されている建材に絞られているため、対象条件を満たさない工事には補助金は適用されません。
補助率・金額の仕組みと補助額の目安
アスベスト除去工事における補助金は、国と自治体の連携によって支給されます。制度の基本構造として、地方自治体が支給する補助額の1/2以内を国が補助する形となっており、補助対象費用全体の1/3以内が上限とされています。
例えば、自治体が30%補助し、国がその半額15%を上乗せすると、実質負担は55%になります(補助率計45%)。工事の規模や自治体によって支給額は異なるため、具体的な金額は事前の見積りとあわせて自治体に相談することが推奨されます。
利用条件と注意点|着工前の手続きが必須
補助金を利用するには、必ず工事前に交付申請と承認を受けることが必要です。申請せずに着工した場合、たとえ対象工事であっても補助金は支給されません。
また、申請手続きは地方自治体を通じて行われ、事前調査結果の提出や建物情報の明示が求められます。さらに、補助対象となるのは「所有者」が行う工事に限定されている点も注意が必要です。なお、地域によっては補助制度そのものが用意されていない場合もあるため、まずはお住まいの自治体の公式情報を確認した上で、補助対象・申請要件を整理しておきましょう。
アスベストの解体費用補助金申請の流れを5ステップで解説
アスベストの除去や解体工事に補助金を活用するには、あらかじめ決められた手続きを踏まなければなりません。ここでは、申請から補助金の受領までの流れを以下の5つのステップに分けて、わかりやすく解説します。
- 補助金制度の有無と条件を確認する
- 対象建材の調査・アスベストの含有を確認する
- 工事計画を立て、補助金の事前申請を行う
- 除去工事を実施し、実績報告書を作成
- 確定検査を受け、補助金が振り込まれる
ステップ1:補助金制度の有無と条件を確認する
最初に行うべきは、補助金制度が自分の地域で利用できるかの確認です。アスベスト除去工事に対する補助金は、国の制度をベースにしつつ、実際の申請窓口や内容は各自治体が管理しています。
自治体によっては、住宅限定・吹付けアスベスト限定・築年数に制限があるなど、条件が異なるため、自治体の公式サイトや環境課・建築指導課などに事前相談することが大切です。
ステップ2:対象建材の調査・アスベストの含有を確認する
補助金を申請するためには、アスベストを含む建材が「実際に存在する」ことを証明する必要があります。そのためには、有資格者による事前調査(事前調査者が図面・現場を確認)や、分析機関によるサンプリング分析を実施しましょう。
石綿含有建材調査者などの資格を有する専門家による調査が義務化(2023年10月以降)されているため、自己判断ではなく、正式な報告書を取得することが重要です。
ステップ3:工事計画を立て、補助金の事前申請を行う
調査結果でアスベスト含有が確認されたら、実際の除去工事を実施する前に、補助金の交付申請を行います。このタイミングが極めて重要で、工事開始後に申請しても補助対象外となる場合が多いです。
提出する書類には以下が含まれます。
- 交付申請書(様式)
- 調査結果報告書・分析結果
- 工事見積書
- 建物の所有者証明・写真
これらを揃えて自治体の窓口に提出し、交付決定通知を受ける必要があります。
ステップ4:除去工事を実施し、実績報告書を作成
補助金の交付決定通知を受けた後、アスベスト除去工事に着手できます。工事は、石綿作業主任者が現場を管理し、法令に基づいた飛散防止措置を施す必要があります。
工事完了後には、以下のような書類を用意し、実績報告として再度提出します。
- 実績報告書
- 工事中および完了時の写真
- 工事完了証明書(施工業者が発行)
- 領収書・請求書
ステップ5:確定検査を受け、補助金が振り込まれる
提出された実績報告書が受理されると、自治体による内容確認・現地検査(必要に応じて)が行われます。問題がなければ補助金の支給額が確定し、指定口座に振り込まれます。
申請から補助金受領までの全手続きには数週間〜数カ月を要することもあるため、解体スケジュールとの調整が必要です。また、補助金の支払いは後払い(償還払い)となるのが一般的ですので、自己資金を用意しておくことも重要です。
アスベスト解体・除去の費用相場と内訳
アスベストを含む建材の解体・除去工事は、建物の種類や規模、使用されているアスベストの種類によって費用が大きく異なります。
加えて、飛散防止措置や養生作業、廃棄物処理の方法もコストに影響します。このセクションでは、建物のタイプごとにおおよその費用相場とその内訳を解説します。
あくまで参考値であり、実際の見積もりは専門業者による現地調査で確認する必要がありますが、全体像を把握する上での指標として活用してください。
【戸建て】解体工事の規模別費用相場
戸建住宅におけるアスベスト除去費用は、建材の種類と施工面積により大きく変動します。たとえば、吹付けアスベストが含まれている小規模な戸建て(30〜40㎡程度)であれば、除去工事費用の相場は6万円〜30万円前後が目安です。
天井材や外壁下地などのレベル3建材(比較的飛散リスクが低い)であれば、1万円〜5万円程度で済むケースもあります。ただし、除去対象が複数ある場合や作業環境が悪い現場では追加費用が発生しやすく、全体で10万円超となることも珍しくありません。
補助金を活用することで、実質負担を3〜5割まで圧縮できる場合もあります。
【マンション】解体工事の規模別費用相場
マンションの場合、共用部・外壁・階段室・天井裏などにアスベスト建材が使われているケースが多く、除去規模も大きくなる傾向があります。たとえば、1フロアの共用部(100〜200㎡程度)で吹付けアスベストの除去を行うと、200万〜500万円以上の費用がかかる可能性があります。
戸数が多い物件では、費用は高額になることもあります。さらに、工事の際は住民への説明や日程調整も重要になるため、工程が複雑化しやすく、追加費用の発生もありえます。管理組合で費用分担や補助金申請を検討し、早めに調整を進めることが鍵となります。
【工場】解体工事の規模別費用相場
工場や倉庫といった産業用施設では、耐火性能を重視してアスベストが広範囲に使用されていることが多く、除去費用も大規模になります。
とくに、天井裏・機械室・配管まわりに吹付けアスベストが使われていた場合、面積や天井高の関係で1,000万円程度に達するケースも珍しくありません。
大型施設の場合は、施工前の詳細な石綿調査・養生・足場設置・廃棄物運搬費も大きな割合を占めるため、費用総額に大きく影響します。補助金制度が適用できる場合は、自治体を通じて早期の相談・申請準備が重要です。
アスベスト除去工事でトラブルを防ぐために気をつけること3選
アスベスト除去工事は、法令や安全対策、補助金制度など多くの規制が絡むため、知識や準備がないまま進めてしまうとトラブルに発展するリスクがあります。
実際、無資格業者による違法工事や、補助金の申請漏れによる自己負担の増大など、注意を怠ることで損害が生じるケースも少なくありません。ここでは、アスベスト除去工事でありがちなトラブルを未然に防ぐために、必ず押さえておきたい3つのポイントを解説します。
無資格業者に除去行為を依頼しない
アスベスト除去工事を依頼する際は、必ず「石綿作業主任者」などの国家資格を保有し、法令に基づいた施工ができる専門業者を選びましょう。2023年10月以降、アスベスト調査・除去に関しては有資格者による実施が義務づけられています。
無資格業者に工事を依頼した場合、法令違反となる可能性があり、補助金が適用されないばかりか、行政指導や施工のやり直しといった事態も発生しかねません。業者選定時には、許可証の提示や過去の施工実績、第三者機関からの認証の有無を確認しておくことが、トラブル回避につながります。
補助金の申請期限を確認する
アスベスト除去に関する補助金制度は、申請のタイミングを誤ると支給対象外となる可能性があります。原則として、補助金は「交付決定前に工事を開始してはいけない」という条件が設けられているため、事前申請、交付決定、工事着手の順を厳守する必要があります。
また、補助金制度の受付期間は年度単位で設定されており、予算の上限に達し次第終了する自治体もあります。特に3月末の年度末にかけては混雑することが多く、審査が遅れる可能性もあるため、補助金を活用したい場合は、計画段階から早めに自治体窓口へ相談し、スケジュールを逆算して申請準備を進めましょう。
除去工事の実績が多いか確認する
アスベスト除去工事は、通常の解体工事と比べて専門性が高く、飛散防止措置や法令遵守が求められるため、実績のある専門業者に依頼することが非常に重要です。過去の施工例が多数ある業者であれば、現場に応じた適切な対策が取れるだけでなく、補助金申請や書類作成のサポートも的確に行ってくれる傾向があります。
見積もりを依頼する際には、「過去にどのような施設で除去工事を行ったか」「自治体の補助金案件に対応した実績はあるか」などの具体的な質問をして確認しましょう。ウェブサイトやパンフレットに施工事例を掲載している業者も信頼性の目安になります。
各地域ごとのアスベスト除去工事の補助金詳細
アスベストの除去・解体工事にかかる費用を軽減するため、各自治体では独自の補助制度を設けています。ここでは、東京都(主に区部)および広島市の補助制度の概要を比較しやすいようにまとめ、地域ごとの違いやポイントを解説します。
東京の除去工事補助金詳細
東京都内の各区では、国の補助制度に加え、独自の助成制度を導入しているケースが多く見られます。制度の内容は自治体によって大きく異なるため、以下に主な区の補助制度を一部抜粋して紹介します。
自治体 | 補助対象 | 補助率・上限額 | 募集時期 | 問い合わせ先 |
千代田区 | 駐車場、倉庫、マンション共有部など | 除去費の2/3(上限100~1,400万円) | 4月~9月頃 | 03-5211-4315 |
新宿区 | 個人宅、マンション、事業所等 | 除去費の2/3(上限50~300万円) | 4月~11月頃 | 03-5273-3544 |
文京区 | 吹付けアスベスト、含有ロックウール等 | 除去費の2/3~5/6(上限200~500万円) | 4月1日~10月31日 | 03-5803-1260 |
足立区 | 延床面積により補助率変動 | ~5/6(上限200~300万円) | 年度内 | 03-3880-8041 |
練馬区 | 各用途で補助率が異なる | 戸建:2/3(上限200万円)、集合住宅等:最大600万円 | 通年 | 03-5984-4712 |
※上記以外にも目黒区や葛飾区など独自制度あり
参照元:東京都内アスベスト補助制度一覧(除去等工事)|東京都都市整備局
広島のアスベスト除去工事補助金詳細
広島市でも、市民の健康不安を軽減する目的で、アスベスト除去・調査に対する補助金制度を実施しています。
項目 | 内容 |
補助対象建材 | 吹付けアスベスト、アスベスト含有吹付けロックウール |
補助対象建築物 | 広島市内の民間建築物(住宅・工場・施設など) |
補助対象費用 | 分析調査(25万円上限・全額補助)、除去工事(2分の1補助・上限100万円) |
申込条件 | 工事前の事前協議が必要。契約後の申請不可。2026年1月末までに工事完了が条件 |
備考 | 補助予定件数に達しない場合は先着順受付あり。調査者・施工者の資格要件あり |
問い合わせ先 | 広島市役所 都市整備局 建築指導課(082-504-2288) |
本制度を利用するには、アスベスト調査・計画・工事すべての工程で有資格者の関与が必要です。なお、本補助金は吹付け材のみが対象で、成形板やスレート板などは含まれません。
参照元:令和7年度 広島市民間建築物吹付けアスベスト除去等補助制度のご案内|広島市公式ウェブサイト
まとめ
アスベスト除去工事は、健康被害を未然に防ぐ重要な取り組みである一方、費用面での負担も大きくなりがちです。
しかし、国や自治体が設けている補助金制度を活用すれば、分析調査や工事費の一部を公的にカバーすることが可能です。特に東京都や広島市では、具体的な補助額や対象建材が明確に定められており、一定の条件を満たせば補助対象になります。
補助金を確実に受け取るには、事前申請・交付決定前の着工禁止などのルールを守ることが大切です。地域の制度内容を確認し、信頼できる業者と連携しながら、安全かつ適切に工事を進めましょう。