繊維壁にアスベストの危険性は?築年数から判断するポイントを解説
投稿日:2025.08.01
繊維壁にアスベストの危険性は?築年数から判断するポイントを解説
住宅の老朽化に伴って再注目されているのが「繊維壁(けいそう壁・じゅらく壁)」に含まれるアスベストの被害です。
特に昭和〜平成初期にかけて建てられた住宅では、アスベストが混入された壁材が使用されていたケースも多く、見た目では判別できないため注意が必要です。
本記事では、繊維壁とアスベストの関係や築年数別のリスク、見分け方、健康被害の可能性、そして専門業者による調査や除去の流れについて、わかりやすく解説します。ご自宅や会社などが対象かどうか気になる方は、この記事で基本知識を押さえましょう。
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繊維壁にアスベストが含まれている可能性とは?
アスベストはかつて多くの住宅建材に使用されており、特に繊維壁(せんいへき)と呼ばれる内装仕上げ材でもその問題が指摘されています。特に1970〜1990年代に建築された住宅では、アスベスト含有の可能性が高く、住環境における健康リスクを正しく把握することが重要です。
この見出しでは、まず繊維壁とは何か、その定義や類似壁材との違いを解説し、アスベストが使われていた時代背景や具体的な建材の特徴、そして築年数から見たリスクの目安について説明します。
「繊維壁」とは?砂壁・じゅらく壁との違い
繊維壁とは、主に天然繊維(パルプ・木綿など)や鉱物繊維を混ぜ込んだ壁材で、壁の仕上げ材として昭和中期〜後期にかけて広く使用されました。繊維を混合することで、柔らかく吸音性が特徴です。
類似の壁材としては「砂壁」や「じゅらく壁」がありますが、それぞれ下記のような違いがあります。
【砂壁】
- 砂と糊(膠など)を混ぜて塗る伝統的な壁材
- 見た目がザラザラしており、土壁の一種
- アスベストはほとんど含まれていないが、補修時の接着剤など使われていた事例もある
【じゅらく壁】
- 珪藻土・石灰などを混ぜた高級左官壁
- 高級和室に使われることが多い
- 骨材としてアスベストが使われた事例も報告
【繊維壁】
- 柔らかく、繊維質が目立つ仕上げ
- 色付きのものや凹凸のある模様が多い
- アスベスト繊維(クリソタイルなど)が混合されていた可能性がある
見た目だけでの判別は難しいため、築年数や材料表示の有無もあわせて確認が必要です。
アスベストが使われた時代と建材の特徴
アスベストは耐火性・断熱性に優れ、1960年代〜1980年代にかけて住宅・ビルなどの建材に幅広く使われました。繊維壁材においても、強度を増したり、断熱・防音効果を高めたりする目的でアスベスト繊維が混入されていた事例があります。
特に以下のような製品でアスベスト含有の可能性があります。
- 吹付け材(繊維質+セメントベース)
- 内装用の塗り壁材(繊維壁):アスベストを混入して施工性を高めたもの
- じゅらく風合成仕上げ材:一部製品でアスベスト入りが流通
2006年の完全禁止以前は、1%以下の含有であれば表示義務なしとされていたため、記載がなくても実際には含まれている可能性もあります。製品名・メーカー名がわかる場合は、国交省や各自治体のリストで該当建材かを確認することが重要です。
アスベストの健康リスクとその影響
アスベストは、極めて微細な繊維状の鉱物であり、空気中に浮遊しやすく、肺に吸引されると深刻な健康被害を引き起こすことがあります。特に長期間の曝露や高濃度の環境では、命にかかわる病気を発症するリスクが高まります。繊維壁に含まれるアスベストも、劣化や破損などにより飛散の恐れがあるため、適切な理解と対策が求められます。
この見出しでは、アスベストが引き起こす病気、その飛散のタイミング、そして日常生活の中での曝露リスクについて詳しく解説します。
吸引によって起こる健康被害(中皮腫・肺がんなど)
アスベストが最も問題視されるのは、吸引による健康被害です。繊維が極めて細かく、肉眼では見えないレベルのため、吸い込んでしまっても気づかないケースがほとんどです。
代表的なアスベスト関連疾患には以下のようなものがあります。
【中皮腫(ちゅうひしゅ)】
- 胸膜や腹膜にできる悪性腫瘍
- アスベスト曝露から30〜40年後に発症することが多い
- 現在でも年間1,000人以上が死亡(厚労省統計)
【肺がん】
- アスベストに長期曝露することで発症リスクが上昇
- 喫煙者との相乗効果で発症率がさらに上がる
【石綿肺(せきめんはい)】
- 長期吸引により肺が線維化(硬化)する慢性疾患
- 息切れ、呼吸困難、慢性的な咳が主な症状
これらの病気はいずれも潜伏期間が長く、発症時には進行しているケースが多いため、早期の曝露回避と適切な管理が非常に重要です。
アスベスト繊維が飛散するタイミングとは?
繊維壁や古い建材に含まれるアスベストは、通常の状態であれば飛散しにくい非飛散性建材(ノンフライアブル)に分類されます。ただし、以下のようなタイミングでは繊維が空気中に飛散する可能性が高まります。
- 経年劣化やヒビ・割れ
- 施工・解体・リフォーム時
- 地震や火災後の建物損壊
特にDIYリフォームなどで無意識に繊維壁を削ってしまうと、自宅内にアスベストが広がるリスクがあるため、施工前の材質確認が不可欠です。
自宅の繊維壁が危険かも?日常生活でのアスベスト曝露リスク
一般的に、未破損・未劣化の状態であれば、日常生活でのリスクは低いとされています。しかし、以下のような場合には注意が必要です。
- ペットや子どもによる接触
- 掃除や模様替え時の摩擦
- 湿気や結露による壁材の剥がれ
アスベスト含有の可能性がある繊維壁がある場合は、触らない・削らない・破らないが基本です。現状を保ちつつ、必要に応じて専門業者に調査を依頼するのがもっとも安全な対応といえます。
繊維壁のアスベストを見分ける方法と対策
アスベスト含有の可能性がある繊維壁を自宅で見つけたとき、正しく見分ける方法を知っておくことは、健康リスクを避けるうえで非常に重要です。
特に築年数が古い住宅では、アスベストを含んだ内装材が使われている可能性があるため、安易に触ったり改装したりする前に判断する手順を知っておきましょう。
目視でチェックできる繊維壁アスベストの特徴とは?
まずは、ご自身で可能な範囲で壁材の様子を確認することが第一歩です。以下のような特徴がある場合、アスベスト含有の可能性があります。
【見た目の質感や色味】
- 表面がざらざらしていて、繊維状の模様が見える
- 灰色がかった色調や、薄茶色、緑がかった色をしていることも
【使用されていた年代】
- 1975年~1990年頃までの建築物で使われていたケースが多い
- この年代の建材で「繊維壁」「ジュラク壁」「砂壁」に似た仕上げがある場合は要注意
【劣化や剥がれの有無】
- ポロポロと崩れる、表面にひび割れがある
- 下地が見えるほど剥がれが進んでいる場合は飛散リスクが高まる
※注意:目視チェックはあくまで「可能性の判断」です。アスベスト含有の有無は見た目だけでは完全に判断できません。
DIY調査の限界
市販のアスベスト検査キット(検体採取後に専門機関へ送るタイプ)も存在します。簡単な手順でできることから、一部の家庭ではDIYで調査される方もいますが、注意点があります。
- 検体採取の際に飛散リスクがある
- 検査結果の信頼性や解釈が難しい
- 検査機関からの報告は専門用語を含むため、一般の方が正しく解釈するのは困難
- 検出限界未満であっても、アスベストが含まれていないとは言い切れない
結果として、DIY調査には限界があるため、判断は専門業者に任せるのが安全かつ確実です。
繊維壁アスベストを専門業者に依頼する際のポイント
アスベスト調査のプロに依頼することで、確実な判定と今後の対応策が明確になります。以下の点を押さえて依頼しましょう。
- 調査内容(調査範囲、検査方法、報告書など)
- 見積もりと事前相談
- 調査後のアドバイス(補助金の活用など)
専門業者による調査・除去の流れ
繊維壁にアスベストが含まれている可能性がある場合、専門業者に調査と除去を依頼することが最も安全かつ確実な対処法です。ここでは、依頼から工事完了までの一連の流れと、それぞれの工程での注意点、費用感について解説します。
繊維壁のアスベスト調査の流れ
アスベストの有無を確認するには、専門業者による「分析調査」が必要です。調査は以下のような流れで行われます。
- 現地確認・ヒアリング(無料の場合もあり)
- 検体の採取(壁材の一部を削り取り)
- 専門機関での分析(PCM法・PLM法などを使用)
- 報告書の提出とリスク評価
※アスベストが検出されなければ、除去工事は不要となりますが、見逃しのないよう信頼できる業者に依頼しましょう。
除去工事の工程と所要期間
アスベストが検出された場合、状況に応じて除去工事が必要となります。除去工事は、法令に基づいた厳格な管理下で実施されます。
- 事前届出(必要に応じて自治体へ)
- 作業範囲の隔離や養生処理
- 除去作業の実施
- 廃棄物の密閉梱包と搬出
- 最終清掃と飛散防止処理
- 必要に応じて空気中の繊維濃度を測定
一部屋程度の規模であれば、工期はおおよそ1〜5日が目安です。ただし、工事範囲や壁材の面積、建物の構造により日数は変動します。
安全装備・養生・処理工程の重要性
アスベスト除去工事で最も重要なのが、作業中の飛散をいかに防ぐかという点です。そのため、以下のような装備・工程が必須です。
【作業者の安全装備】
- 防護服(使い捨てタイプ)
- 高性能防じんマスク(P3等級)
- 手袋・ゴーグルなどの保護具
【養生と負圧管理】
- 作業空間をポリシートで完全密閉
- 空気を屋外に逃がす「負圧除じん機」設置
【 廃棄物処理】
- 特別管理産業廃棄物として扱い
- 二重梱包と明示ラベル貼付が法令で義務付けられてる
これらの対策により、作業者および住環境への二次被害を防ぎます。
除去後の空気環境の確認とアフター対応
アスベスト除去工事が完了した後も、本当に安全な状態が確保されているかを確認することが重要です。専門業者は空気中のアスベスト繊維の濃度を測定し、労働安全衛生法に基づいた基準値以下であることを確認します。
また、多くの業者では作業工程や廃棄処理の詳細をまとめた報告書が発行され、施工の信頼性を裏付けます。一部の業者では、再飛散が発覚した際の保証対応を行っている場合もあり、アフターサポートの充実度も業者選びのポイントです。
特に封じ込め工法を採用したケースでは、将来的な再発リスクの説明を丁寧に受けることが大切です。除去後も安心して暮らせるよう、継続的な安全対策とサポート体制に注目しましょう。
まとめ
繊維壁材は、築年数や使用建材によってアスベストを含んでいる可能性があり、特に1970〜1990年代の住宅では注意が必要です。アスベストは吸引により深刻な健康被害を引き起こすため、日常生活での飛散リスクを正しく理解し、早期の確認と対応が求められます。
調査は専門業者に依頼し、安全な除去と空気環境の確認を徹底することが重要です。また、除去後のアフターサポートや保証体制にも注目し、長期的に安心できる住環境を維持しましょう。正しい知識と段階的な対策が、家族や会社員の健康を守る第一歩です。