土壌汚染を防ぐためにできること|わたしたちだけでなく企業でもできることを解説

土壌汚染を防ぐためにできること|わたしたちだけでなく企業でもできることを解説

土壌汚染防ぐためにできること

土壌汚染は、工場や家庭から漏れ出す化学物質や不適切に処理された廃棄物が地中に蓄積し、地下水汚染や農作物への影響を通じて私たちの健康や環境に深刻なダメージを与える見えにくい問題です。

この記事では、「土壌汚染とは何か?」を解説し、そのうえで個人がすぐに実践できる5つの対策と、企業が取り組むべき施策をご紹介。日常生活やビジネス活動の中で取り入れられる具体的な行動を通じて、安全で健全な土壌環境を次世代へとつないでいく方法をお伝えします。

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そもそも土壌汚染とは?基本をわかりやすく解説

土壌汚染とは、重金属類や揮発性有機化合物、農薬などの有害物質が地中に浸透・蓄積し、本来の土壌の機能(作物を育てる力や水をろ過する力)を損なう現象です。こうした汚染物質は地下水を汚染したり、食品を通じて人体に取り込まれたりすることで、健康被害や生態系の破壊を引き起こす可能性があります。

日本では2003年施行の「土壌汚染対策法」により、特定有害物質を含む土壌汚染の調査・対策が義務付けられています。

土壌汚染を防ぐために個人ができる10の具体的対策

 私たちの日常生活のちょっとした習慣が、知らず知らずのうちに土壌汚染を招く原因になっていることがあります。とはいえ、大規模な設備投資や専門知識がなくても、個人レベルで実践できる対策を積み重ねることで、身近な土地の健康を守り、将来世代へのリスクを大幅に減らすことが可能です。ここでは、すぐに始められる10の具体策をご紹介します。

1. 不要な化学物質・薬品の適切な処理

家庭で余っている塗料、洗剤、除草剤、医薬品などは、絶対に流し台や側溝に捨てず、「有害ごみ」として自治体の指定日に回収に出しましょう。使い切れない分は中身を使い切って空容器化し、ラベルを剥がして分別することで、化学成分が土中に漏れ出すリスクを低減できます。

また、一部自治体では回収後の再利用や中和処理を行っているため、正しく出すだけで環境負荷を大きく下げられます。さらに、DIYや園芸で化学薬品を使う際は、最低限の量を購入し、使用量を計画的に管理する習慣をつけることが大切です。

2. 徹底した分別・リサイクルを心がける

プラスチック、金属、ガラス、紙、有機ごみなどを正しく分別しリサイクルに回すことで、不法投棄や埋め立てによる土壌への有害混入を防止できます。詰め替え容器やリユース製品を選ぶと廃棄物そのものを減らせるうえ、リサイクル工程で化学薬品が使われにくくなり、間接的に土壌保全に貢献します。

さらに、自治体やリサイクルショップが実施するリユースイベントやフリマアプリを活用して、まだ使えるものを手放すことで、廃棄物発生自体を抑制できます。

3. 無農薬・減農薬の食品や肥料を選ぶ

家庭菜園や園芸で使う肥料には、有機栽培向けの堆肥や低残留肥料を選び、市販の野菜や果物もできる限り無農薬・減農薬品を購入しましょう。

農薬成分は長期間にわたり土中に蓄積しやすいため、土壌の微生物バランスを崩す原因になります。自然由来の肥料やコンポストを活用して、健康な土壌環境を長く維持しましょう。さらに、育てた野菜の残渣や落ち葉を自家製堆肥に再利用し、土作りのサイクルを回すことで、外部からの化学肥料投入を減らすことが可能です。

4. 雨水の浸透コントロールと透水性舗装の活用

豪雨時に排水溝へ一気に流れ込む雨水は、有害物質を土壌から洗い流し下流域を汚染します。屋根やベランダからの雨水は貯留タンクに溜めて庭木の水やりに再利用したり、透水性ブロックや砂利を敷いて雨水が地面にゆっくり浸透するように工夫すると、汚染拡大の防止につながります。

加えて、雨水利用システムを導入する際はフィルターを設置し、落ち葉や泥などの粗大なごみを除去してから再利用することで、腐敗や雑菌繁殖も抑えられます。

5. 緑化・グリーンカバーで土壌を守る

裸地や雑草地に芝生や地被植物(グラウンドカバー)を植えると、雨水による土壌流失を抑え、化学物質が地下深くに浸透するのを防ぎます。特に急な勾配地では、植物の根が土を保持してくれるため、土壌の浸食防止と保水性向上の両立が可能です。

さらに、グリーンカバーは夏季の地温上昇を抑え蒸発も減らすため、土壌の乾燥を防ぐ効果も期待できます。

6. 環境配慮型製品を選ぶ買い物習慣

洗剤や家庭用化学製品は、環境ラベルやエコマーク付きのものを選ぶと、界面活性剤や漂白剤などの有害成分が抑えられています。消耗品を選ぶ際に成分表示をチェックする習慣をつけることで、日常的に土壌負荷を減らすことができます。

さらに、生分解性の高い製品や再生原料を使用した商品を選ぶと、製造から廃棄までのライフサイクル全体で環境負荷を抑制でき、持続可能な消費行動につながります。

7. 地域の環境保全・清掃活動への積極参加

自治体やNPOが主催する河川敷、公園、里山の清掃イベントに参加し、不法投棄ゴミを拾い集めることで、汚染の初期段階から対処できます。地域の人々と一緒に活動することで、より広範囲の土壌保全意識を高めると同時に、情報交換の場としても活用できます。

参加後はSNSで成果を共有したり、地元メディアに取り上げてもらうことで、さらなる参加者増加や啓発効果を促進できます。

8. 土壌モニタリング活動や情報共有

自治体が実施する地元の土壌調査結果は、環境省や都道府県のウェブサイトで公開されることがあります。SNSや地域の掲示板で最新情報をシェアし、疑わしい箇所を見かけたら早期に通報する体制を整えることで、地域で汚染拡大を防げます。

加えて、ボランティアで土壌サンプルを採取して自主調査を行い、学会や研究機関と連携してデータを提供する取り組みも、科学的根拠に基づく対策を後押しします。

9. 土壌汚染に関する正しい知識の習得と啓発

土壌汚染対策法や特定有害物質の基準値は定期的に改訂されています。環境省や都道府県の公式セミナー、学習会、専門書籍で基礎知識を深め、家庭や地域活動に取り入れることで、将来のトラブルや健康被害を未然に防止できます。

また、自らミニ講座を企画して近隣住民に共有したり、学校の環境教育に協力することで、次世代への理解促進にも貢献できます。

10. 専門機関への相談や定期的な土壌検査

心配な土地や長年使われてきた工場跡地などでは、専門のコンサルタント企業や公的検査機関に土壌サンプルを採取・分析してもらいましょう。

自治体によっては土壌検査の助成制度を設けている場合もあるので、積極的に活用して安全を確認することが重要です。検査結果を定期的に記録し、汚染リスクが高まっていないかをチェックすることで、早期対策の判断材料を確保できます。

企業が実践できる土壌汚染防止の5つの取り組み

企業は、自社の事業活動が地域の土壌に与える影響を最小限に抑える責任があります。以下の5つの具体策を導入することで、法令遵守だけでなく、地域社会への信頼向上やリスク軽減にもつながります。

排出物・廃棄物の適正管理と削減

産業廃棄物や化学物質を含む排出物は、適正な保管・運搬・処理契約を結ぶことが必須です。廃棄物の発生量を定期的にモニタリングし、リサイクルや有害物質置換の検討を行うことで、土壌への漏出リスクを低減します。

化学物質管理体制の整備と従業員教育

社内で使用する特定有害物質リストを整備し、購入・使用・廃棄までを一元管理できる化学物質管理システムを導入しましょう。取り扱い基準や緊急時対応フローを社員に浸透させ、定期的な教育訓練を実施することで、ヒューマンエラーによる土壌汚染を防ぎます。

土地利用の事前調査とリスクアセスメント

新規事業所や工場敷地を取得・借用する際には、土壌汚染対策法に基づく事前調査を必ず実施。地歴調査や表層土壌調査、必要に応じて詳細調査を行い、リスクを数値化したアセスメント結果を経営判断に反映させます。

持続的なモニタリングと報告制度の構築

操業開始後も定期的に地下水・表層土壌サンプリングを実施し、汚染指標を継続的に監視することが重要です。異常値が検出された場合には速やかに是正措置を講じ、社内外への報告ラインを明確化して透明性を担保します。

ステークホルダーとの連携と地域貢献

周辺自治体や住民、環境NGOとの対話の場を設け、調査結果や是正計画を共有しましょう。学校や市民団体との共同清掃・樹木植樹などの環境保全活動を支援することで、社会的信用を高めつつ、地域全体の土壌環境改善にも貢献できます。

私たちの生活と土壌汚染の関係

私たちの普段の暮らしで使用するさまざまな物質や廃棄物は、知らず知らずのうちに土壌へ流入し、汚染の一因となっています。家庭や職場から排出される化学物質は、排水や不適切な廃棄を通じて地下に浸透し、地中の微生物や植物、生態系を傷つける可能性があります。

また、ゴミ置き場から漏れ出した有害物質、道路から流れ込む油脂類や重金属なども、最終的に土壌にたまり、農作物への影響や地下水汚染へとつながりかねません。ここでは、身近な活動がどのように土壌に影響を与えるのかを具体的に見ていきます。

日常生活で使われる化学物質や廃棄物の影響

  • 家庭用洗剤・シャンプーなどの界面活性剤
    排水管から流れ出た界面活性剤は、土壌中の微生物バランスを崩し、汚染物質の分解を妨げます。
  • 塗料や溶剤(ペンキ、ニス、シンナー)
    含まれる有機溶剤や重金属が、大気と一緒に沈降して土壌を汚染。固化せず長期間残留するため、累積的に濃度が高まります。
  • 家庭用電池・蛍光灯の不適切廃棄
    電池に含まれる水銀やカドミウム、蛍光灯の水銀が漏れ、土壌に重金属汚染を引き起こします。
  • 古い家電や電子機器
    プリント基板に含まれる鉛・カドミウムなどが、不法投棄や劣化によって土壌へ流出します。

自動車・家庭菜園・家庭用洗剤などがもたらす汚染の可能性

  • 自動車からの漏油・廃オイル
    駐車場や車庫でのオイル漏れがアスファルトの隙間から地中へしみ込み、有機溶剤や鉛、ポリ塩化ビフェニル(PCB)などが土壌を汚染。
  • タイヤ摩耗粉末
    走行によって摺り減ったタイヤゴム中の重金属や合成樹脂が微粒子となって土壌に積もり、生態系や地下水に悪影響を及ぼします。
  • 家庭菜園の農薬・化学肥料
    除草剤や殺虫剤、化学肥料中の硝酸やリン酸が余剰に残留し、地下水や周辺の農地を富栄養化させるほか、微生物相を変えて土壌の健全性を損ないます。
  • 家庭用洗剤のリン・窒素成分
    台所や風呂場からの排水に含まれるリンや窒素が、浄化施設を通り抜けて河川経由で土壌へ運ばれ、植物の過剰成長(アオコ発生)や根圏微生物への毒性を示すケースがあります。

 地域で取り組む土壌保全方法

土壌汚染は個人や企業の取り組みだけでなく、地域全体の協力によって大きく改善できます。まず第一に、地域ぐるみでの緑化活動が有効です。公園や空き地に適した樹木や草花を植えることで、降雨時の表土流出を防ぎ、有害物質の拡散を抑制できます。また、緑化帯そのものが汚染物質をフィルタリングする役割も果たします。

また、住民同士の情報共有も欠かせません。地域の掲示板やSNSグループを活用し、不法投棄や不適切な廃棄物処理の疑いがある場所を報告し合う仕組みを作りましょう。早期発見・早期対処が、汚染の拡大を防ぐ鍵となります。

地域での土壌保全は「みんなの資産」を守る活動です。日々の小さな行動が将来の健康被害や環境リスクを大幅に減らします。ぜひお住まいのまちで声を掛け合い、できることから一緒に始めましょう。

まとめ

これらの身近な活動が複合的に作用し、土壌の品質低下や生態系破壊へとつながるため、意識的な取り組みが欠かせません。

私たちの普段の暮らしで使う家庭用洗剤や塗料、車からの漏油やタイヤの摩耗粉じん、そして家庭菜園での農薬・化学肥料などは、排水や風雨・不適切な廃棄を通じて土壌に浸透し、微生物や植物、地下水に悪影響を及ぼします。特に界面活性剤や重金属、肥料の窒素・リン成分は長期的に蓄積・拡散しやすいため、製品選びから廃棄方法まで見直すことが重要です。今後は、環境負荷の少ない洗剤・塗料の使用、油漏れ対策の徹底、不要農薬の削減、地域清掃への参加など、日常生活を意識的に改善し、健全な土壌環境を次世代へとつないでいきましょう。

土壌汚染対策法についてわかりやすく解説!対象や届出に関しても紹介

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土壌汚染対策法わかりやすく

「土壌汚染対策法は難しそう…」「どんな土地に関係あるの?」と疑問をお持ちの方は多いでしょう。

土壌汚染対策法をわかりやすく説明すると、特定有害物質による土壌の汚染調査、及びその汚染による人の健康被害の防止措置等を定めた法です。国民の健康を保護し、安全に暮らすことを目的としています。

この記事では、土壌汚染対策法の仕組みや対象となる土地、必要な手続きや調査の流れをできるだけわかりやすく解説します。最後まで見れば、土壌汚染対策法を理解でき、どのような対処をすれば良いか分かるでしょう。

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土壌汚染対策法の概要をわかりやすく解説

土壌汚染とは、有害物質が地中に浸透・蓄積し、土壌の健全性を損なう環境問題です。重金属類(シアン、カドミウム、ヒ素、六価クロムなど)や、揮発性有機化合物(四塩化炭素、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレンなど)といった化学物質が、工場や事業場の活動、廃棄物の不適切な処理などを通じて、地面に漏れ出すことで引き起こされます。

特定有害物質の詳細や土壌溶出量基準は以下の記事を参考にしてください。

土壌汚染調査|水質・大気・土壌・アスベスト調査などの環境分析・自動分析装置なら広島のラボテック株式会社

土壌汚染の問題点は、目に見えないまま長期間にわたって健康被害や環境破壊を引き起こす点にあります。たとえば、汚染された土壌から地下水汚染が発生したり、農作物汚染を通じて人体へ有害物質が取り込まれたりする可能性があるためです。

土壌汚染対策法においても、土壌環境の安全性を確保するため、一定規模以上の土地に対する調査義務や、汚染土壌の処分・除去・封じ込めなどの対策が定められています。

土壌汚染は、健康リスクや不動産価値の低下、周辺住民とのトラブルにもつながるため、早期の把握と正しい理解が重要です。

土壌汚染対策法が必要とされた背景

土壌汚染対策法は、2000年代初頭に急増した土壌汚染の発覚を背景に、国民の健康と安全を守るために制定されました。特に問題となったのは、工場や研究施設などで使用されていた有害物質が、長年の操業を経て土壌中に漏れ出し、再開発時に初めて汚染が判明するケースが相次いだことです。

当時、土壌汚染に関する包括的な法律は存在せず、汚染が発覚しても調査や除去を義務付ける仕組みがなかったため、健康被害への懸念や住民トラブルが社会問題化していました。このトラブル受け、2000年から環境省が有識者による検討会を立ち上げ、制度のあり方について議論が開始されました。その後、2002年に「土壌汚染対策法」が国会で成立し、2003年に施行される運びとなりました。

土壌汚染の見えにくさと影響の深刻さが制度の立法背景にあり、調査や管理の法的枠組みが求められたのです。

土壌汚染対策法の基本的な目的

土壌汚染対策法の目的は、土壌汚染による人の健康被害を未然に防ぐことにあります。具体的には、汚染の可能性がある土地に対して調査を行い、必要に応じて除去や封じ込めなどの措置を講じることで、地下水や農作物などを通じた間接的な健康被害を抑えることが目的です。

汚染が確認された土地については「指定区域」として登録・管理し、将来的な土地利用においても適切な対応がなされるよう仕組みが整備されています。これにより、土地所有者や利用者、周辺住民が安心して暮らせる環境づくりを法的に支える体制が構築されています。

この法律は汚染の発見・報告から、改善措置、情報公開に至るまでを一貫して規定しており、国民の安全と環境保全の両立を実現することがもう一つの大きな目的です。

土壌汚染対策法の対象になる土地とは?

土壌汚染対策法では、すべての土地が対象となるわけではありません。対象となるのは、有害物質の使用履歴がある土地や、人の健康被害が生じるおそれがあると判断された土地など、一定の条件を満たした場合に限られます。

この見出しでは、法律上対象となる主な土地の種類と、それぞれに求められる調査・届出義務について解説します。

有害物質使用施設の跡地は調査義務の対象

過去に有害物質を使用していた施設の跡地は、土壌汚染調査の義務対象となります。具体的には、「水質汚濁防止法」に定められた有害物質使用特定施設(例:メッキ工場、化学薬品工場など)が該当します。

有害物質使用特定施設が廃止された場合、土地の所有者や管理者は、指定調査機関による調査を実施し、その結果を都道府県知事に報告する義務があります。

なお、健康被害の恐れがないと知事に認められた場合は、調査義務が免除されることもあります。

健康被害が懸念される土地は知事の判断で調査命令

土地に有害物質が存在し、人の健康に被害が及ぶおそれがあると都道府県知事が判断した場合、その土地の所有者等に対して、強制的に調査を命じることが可能です。

この場合は、過去の利用履歴に関係なく調査対象になる点が特徴です。例えば、周辺地域の地下水や農作物に影響が出ている場合や、工事中に汚染が発覚した場合などが該当します。

行政が調査命令を出すと、正当な理由がない限り指定調査機関による調査と報告が義務化されるため、無視することはできません。

土地の形質変更を予定している場合の対象条件

土地の掘削、盛土、造成などの形質変更を予定している場合も、一定の条件を満たせば土壌汚染対策法の届出対象となります。特に注意が必要なのは、すでに「要措置区域」または「形質変更時要届出区域」に指定されている土地です。

区域内の土地では、工事を行う30日前までに都道府県知事への届出が義務付けられており、施行方法に問題があると判断された場合は変更命令が出されることもあります。

届出を怠ると、行政指導や原状回復命令の対象となる場合があるため、工事業者や不動産事業者は必ず確認を行う必要があります。

すでに指定区域となっている土地の確認方法

土壌汚染が確認され、法に基づいて正式に区域指定された土地は、「指定区域」として公示・管理されています。指定区域には、主に以下の3種類があります。

  • 要措置区域
  • 形質変更時要届出区域
  • 条例に基づく対策区域一覧

上記の指定区域は、各都道府県の環境保全課や行政の土壌汚染区域台帳などで公開されており、誰でも閲覧が可能です。不動産売買や開発前には、必ず対象地の指定有無を確認しておくことがリスク回避につながります。

参考例:要措置区域等の指定状況|土壌汚染対策法|東京都環境局

土壌汚染対策法における手続きの流れと届出のポイント

土壌汚染対策法では、調査から行政報告、指定区域の扱いや工事の実施に至るまで、複数の手続きが段階的に定められています。義務を怠れば罰則の対象にもなるため、正しい流れと届出のタイミングを把握することが重要です。ここでは、手続きごとのポイントを順を追って解説します。

土壌汚染の調査を行うための基本手続き

土壌汚染の調査は、主に「有害物質使用特定施設が廃止された土地」や「知事が健康リスクを認めた土地」で義務づけられています。調査は環境省が指定した指定調査機関に依頼し、地歴調査を実施します。

その結果、リスクが高いと判断された場合は、現地で土壌概況調査や土壌詳細調査(表層土壌調査やボーリング調査)へと進みます。事業者は、対象となる土地を把握し、早い段階で調査機関に相談・見積もりを取ることが推奨されます。

調査結果の報告方法と行政への提出義務

調査が完了したら、報告書を作成して都道府県知事へ提出する必要があります。報告書には、対象地の所在地や調査範囲、分析結果、有害物質の濃度、汚染の範囲などを記載します。

提出は、基本的に調査を実施した指定調査機関が代行することが多いですが、土地所有者・事業者側も内容を理解しておくことが重要です。

指定区域に関する通知と公示の流れ

調査の結果、土壌が環境基準を超えて汚染されていると認められた場合、都道府県知事が「指定区域」としての指定・公示を行います。

この区域指定には2種類あり、健康被害が懸念される土地は「要措置区域」、汚染の程度が軽微であっても一定の制限が必要な土地は「形質変更時要届出区域」に分類されます。

指定された情報は台帳として公開され、誰でも閲覧可能です。指定区域となると、以後の土地利用や工事に法的制約がかかるため、通知後の対応が重要になります。

H3.土地の形質変更を行う際の届出手続き

指定区域となった土地で掘削・盛土・建設などの工事を行う場合、着手の30日前までに都道府県知事へ届出が必要です。

提出書類には、工事の内容、期間、施工方法、使用機材などを詳細に記載する必要があり、不備があると受理されない場合もあります。知事が工事方法に問題があると判断すれば、計画の変更命令が出されることもあるため、指定調査機関と協力して準備することが重要です。

土壌汚染対策工事を実施する際の手続き

汚染が確認された土地では、汚染除去や封じ込めなどの対策工事を実施する必要があります。これらの工事は、「措置命令」が出された場合は強制力を持ち、命令対象者(通常は土地所有者または汚染原因者)が実施義務を負います。

工事には、掘削除去、原位置浄化、囲い込みなどの工法があり、内容に応じて事前協議や報告書の提出、モニタリング計画の提出が必要になります。行政と連携しながら、工程や安全管理に関する手続きを段階的に進めることが大切です。

土壌汚染対策法に違反するとどうなる?罰則やリスクを解説

土壌汚染対策法では、特定の条件下で土壌調査や行政への届出、汚染除去などが義務付けられており、怠ると罰則や行政処分の対象となります。

さらに、違反によって企業の信用や不動産価値にも深刻な影響を及ぼします。この見出しでは、具体的な違反事例や法律上の罰則、実務的な企業への影響を詳しく解説し、トラブルを未然に防ぐためのポイントまで紹介します。

調査義務違反で科される行政処分の罰則

土壌汚染対策法では、有害物質を扱う施設が廃止された土地や、健康被害の恐れがあると判断された土地に対して、都道府県知事の命令により土壌調査を実施し、その結果を報告する義務があります。

命令に違反した場合、土壌汚染対策法第65条に基づき、1年以下の懲役または100万円以下の罰金罰則が科される可能性があります。

また、調査を行うのは指定調査機関に限られており、無資格業者による調査結果を提出しても無効とされるため、調査先の選定にも注意が必要です。

土地の形質変更時の無届出行為の問題

要措置区域や形質変更時要届出区域に指定された土地では、掘削や盛土、舗装などの形質変更を行う場合、土壌汚染対策法第12条に基づき事前に(十四日前までに)届出を提出しなければなりません。
※一部例外あり

この届出を怠ると、次のような問題や罰則が発生します。

  • 3月以下の懲役又は30万円以下の罰金
  • 措置命令(届出に基づく計画の中止または修正が命じられる)
  • 計画変更命令(無断で汚染土壌を動かした場合、施工方法の変更を命じられる)

さらに、違反の記録が行政に残ることで、今後の土地活用や開発許可申請の審査に影響を及ぼす可能性も否定できません。

違反による企業の信用への影響

法令違反は、単なる行政手続きのミスでは済まされず、企業のブランドや信用に直接的な悪影響を及ぼします。

たとえば以下のようなリスクが考えられます。

  • 近隣住民とのトラブル発展
  • 取引先・金融機関からの評価低下
  • 株主や投資家からの批判

特に現代では、環境対応への姿勢が企業評価に直結する時代です。土壌汚染対策を軽視すれば、企業全体の競争力にも影響を及ぼしかねません。

トラブルを防ぐために事前にできる対策とは?

上記のようなリスクを回避するためには、事前の法令理解と、土地利用前の段階での土壌汚染調査が重要です。

  • 開発・売買前に地歴調査と土壌汚染リスクの有無を確認
  • 該当する場合、指定調査機関による調査を早期に依頼
  • 行政との連携を取りながら、必要な届出・申請を確実に実施
  • 汚染の可能性がある土地については、契約書に負担区分を明示しておく

加えて、社内で環境法務の担当者を明確にし、調査〜対策までのフローを整備することも、組織的なリスク管理として非常に大切です。

土壌汚染調査はどう進める?流れを簡単に解説

土壌汚染調査は、対象地に有害物質が存在するかを調査し、健康や土地利用の影響を判断するために行います。基本的な流れは、地歴調査で過去の土地利用や汚染リスクを文献などから確認します。その結果、必要に応じて表層土壌調査やボーリング調査などの現地調査を行います。

調査は環境省の指定調査機関によって実施され、結果に基づいて行政への報告や、除去・封じ込めといった対策が必要になる場合もあります。費用や調査内容は土地の規模や汚染リスクによって大きく異なるため、目的に応じた計画的な進行が重要です。

土壌汚染調査の詳細や費用に関して知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。

土壌汚染調査の費用はいくら?種類別の目安と費用を抑えるポイント

土壌汚染対策法に関するよくある質問

土壌汚染対策法をより理解するために、以下よくある質問を確認してください。最後まで見れば、面積の基準や立入禁止などの詳細が理解できるでしょう。

土壌汚染対策法にはどんな種類の土地区域がありますか?

土壌汚染対策法では、調査の結果に応じて主に以下2つの指定区域があります。

  • 要措置区域:汚染により健康被害のおそれがある土地
  • 形質変更時要届出区域:健康リスクは低いが掘削などを行う際には事前の届出が必要な土地

土壌汚染対策法で対象となる面積の基準はありますか?

一部の届出や手続きにおいて、面積基準が設けられています。

  • 土地の形質変更を行う場合、土地の面積が3,000㎡以上であると、原則として届出が必要
  • 土壌調査義務の免除を受けた土地は、1,000㎡以上の形質変更で届出義務が発生
  • 900㎡未満の土地の形質変更は、多くの場合で届出不要

※この基準は、土壌汚染対策法第3条・第4条およびその施行規則に基づいて定められています。

なお、面積の基準に加えて、土地の過去の利用履歴や有害物質の使用有無などの事情も、調査命令や区域指定の判断材料となります。

様々な状況によっても変わるため、詳細は以下を御覧ください。

土壌汚染対策法に関する Q&A(令和4年7月1日)|環境省

土壌汚染対策法で「立入禁止」とはどういう意味ですか?

立入禁止とは、要措置区域に指定された土地のうち、汚染によって人の健康被害が生じるおそれが高い場合に、都道府県知事が立入制限などの措置を命じる制度です。

立入禁止措置は、主に立ち入りなどの接触によって有害物質が飛散・摂取防止の目的で実施されます。

土壌汚染の不安があるなら、指定調査機関のラボテックに相談!

土壌汚染対策法は、土地の所有者や利用者が適切な調査・対策を行うことで、健康被害や社会的責任を回避するために定められた法律です。違反すれば行政処分や罰則に加え、企業信用や資産価値にも大きな影響を与えかねません。

とくに、有害物質を扱う施設の跡地、再開発予定地、土地の売買・相続を控えるケースでは、早期の調査と適切な専門機関への相談が重要です。

ラボテック株式会社は、環境省より正式に指定を受けた指定調査機関(指定番号:環 2003-6-1019)です。地歴調査から概況・詳細調査、行政への報告対応まで、豊富な実績と専門知識でサポートしています。土壌汚染の不安や調査なら一度ぜひご相談ください。

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