建設発生土とは?第1種・第2種・第3種・第4種などの種類や違いを解説
投稿日:2025.09.18
建設発生土とは?第1種・第2種・第3種・第4種などの種類や違いを解説
建設工事の現場で必ず発生する「建設発生土」。普段あまり意識しない存在ですが、種類ごとに性質や利用価値が大きく異なり、環境や安全に直結する重要なことです。
特に2021年の熱海市盛土崩落事故以降、国土交通省も発生土の管理や再利用に関する指針を強化しています。
本記事では、建設発生土の基礎知識から種類と品質区分、再利用方法、さらに法律や規制の最新動向まで、2025年時点で押さえておきたいポイントをわかりやすく解説します。
建設発生土とは?基礎的な知識を解説
建設発生土に関して、以下3つから基礎的な部分を解説します。
最後まで読めば、建設発生土とは何かが理解できます。建設廃棄物との違いは、よく建設発生土と間違えられるので、必ず確認してください。
建設発生土の定義|建設副産物の位置づけ
建設発生土とは、建設工事に伴って掘削や造成の過程で発生する土砂のことを指します。具体的には、道路やトンネル、宅地造成などで地盤を掘削する際に排出される土や岩石類が該当します。
建設副産物の一つとして位置づけられており、建設廃棄物(コンクリートがらや木くずなど)や有価物(鉄スクラップやアスファルト再生材など)とは異なるカテゴリに分類されています。発生量が非常に多く、全国で年間数億立方メートル規模に達するため、その適切な処理・再利用は社会的に大きな課題となっています。
建設発生土と建設廃棄物・有価物の違い
建設発生土は「土砂そのもの」であり、一般的には自然由来のものである点が特徴です。
一方、建設廃棄物は建設行為に伴って生じる人工的な不要物であり、コンクリートやアスファルト、木材などが該当します。有価物は廃棄物ではなく、再利用やリサイクルの価値を持つ副産物を指します。建設発生土は「自然物であるが処理や管理が必要なもの」という位置づけで、廃棄物と有価物の中間的な存在といえます。
残土・土砂・汚染土の用語使い分け
建設発生土と混同されやすい用語に以下の3つがあります。
- 残土
- 土砂
- 汚染土
残土は、工事現場で余った土を指すことが多く、建設発生土の一部として扱われるケースがあります。土砂は、自然界の地盤を構成する砂や粘土、礫などを包括的に指す一般的な言葉です。汚染土は、重金属や有害物質を含んだ土壌を指し、土壌汚染対策法などの対象となります。
特に、汚染土は通常の建設発生土とは異なり、産業廃棄物に近い扱いを受け、厳格な処理基準が求められます。
建設残土が有害物質を含有していないことの確認
代表例:土壌の汚染に係る環境基準(環告46号) 溶出試験28項目
土壌環境基準 別表 | 環境省:土壌汚染対策法 土壌含有量基準(環告19号) 含有量試験9項目
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建設発生土の種類と品質区分
建設発生土はすべてが同じ性質を持っているわけではなく、含まれる成分や物理的性質に応じて品質区分が設けられています。国土交通省の基準に基づき、大きく「第1種〜第4種」および「泥土(建設汚泥)」に分類され、それぞれで再利用の可否や処理方法が異なります。以下では、それぞれの特徴と用途について解説します。
- 第1種建設発生土
- 第2種建設発生土
- 第3種建設発生土
- 第4種建設発生土
第1種建設発生土(良質・即利用土)
第1種建設発生土は、砂質土や礫質土を主体とした非常に安定性の高い良質な土です。粒度が均一で含水比も適切な場合が多く、特別な改良処理を施さなくてもそのまま盛土や造成材として利用できる点が大きな特徴です。
具体的には、道路の路体や宅地造成、公園やグラウンド整備など幅広い土木工事に直結して活用されます。追加の処理コストが不要なため、経済性に優れ、建設副産物の中でも「資源」として最も重視される区分です。
建設発生土の循環利用を推進するうえで、いかに効率よく現場や地域で活用できるかが重要となります。
第2種建設発生土(改良・調整前提土)
第2種建設発生土は、シルト質や粘土質を多く含み、含水比が高いケースが多いため、そのままでは強度や安定性に欠けることが多い区分です。再利用には固化材を用いた改良処理や乾燥処理、他の土との混合など調整が必要です。
処理を経れば盛土材や埋戻し材として利用でき、工事現場や造成工事で役立ちます。ただし、処理コストと再利用後の品質確保のバランスが課題であり、過剰な処理を行えばコストが膨らみ、逆に処理不足では施工品質に影響します。
そのため、事前調査で性状を正確に把握し、効率的な処理計画を立てることが第2種建設発生土の利活用において重要です。
第3種建設発生土(岩混じり・粗粒主体土)
第3種建設発生土は、玉石や岩塊、粗大な礫などを多く含む粗粒土です。そのままでは取り扱いが難しく施工現場で敬遠されがちですが、破砕処理を行えば砕石や骨材として再資源化できるポテンシャルを秘めています。
道路舗装の下層材や河川・港湾の護岸材、基盤構造物の安定材としての活用が想定され、建設資材としての価値は高いといえます。
また、天然資材の採掘を減らす効果もあり、環境負荷低減に直結します。適切な加工設備や搬送ルートを確保できれば、資源循環の一翼を担う建設発生土として重要性を増していきます。
第4種建設発生土(有機質・高塩分等の難処理土)
第4種建設発生土は、有機質土や腐植土、塩分を多く含む土壌を指します。地盤強度が低く、塩害による鉄筋コンクリートの劣化や作物への悪影響、腐敗臭の発生など、二次的なリスクが大きいことが特徴です。
そのため、そのまま再利用するのは困難で、焼却や洗浄、固化、長期乾燥など特殊な処理が必要となります。処理コストが高額になりやすい一方で、適切な技術を導入すれば肥料原料や限定的な造成材としての活用可能性が模索されています。
難処理土であるため、技術開発や制度整備による対応が今後の大きな課題です。
泥土・建設汚泥の扱い
建設工事、特にトンネル掘削や地盤改良工法では、大量の「泥土(建設汚泥)」が発生します。高含水比で流動性が強く、そのままでは輸送や処理が難しいため、脱水処理や固化処理を経ることが不可欠です。
処理後には埋戻し材や地盤改良材として再利用できる場合があり、技術次第で有効活用の幅が広がります。近年では、建設汚泥の効率的な処理を目的とした新技術が開発されており、環境負荷低減と資源循環の両立が期待されています。
泥土は建設副産物の中でも特に課題の多い存在ですが、逆に処理技術の進歩によって最も資源価値が高まる可能性を秘めています。
建設発生土が注目されるようになったきっかけを国土交通省の調査から解説
建設発生土が注目されるようになったきっかけは、「主に、静岡県での盛土崩落が契機となりました。そこからどのような対策が施されるようになったのかをわかりやすく解説します。
静岡県熱海市で大雨に伴って盛土が崩落
2021年7月、静岡県熱海市で発生した大規模土石流災害は、建設発生土の取り扱いを社会問題化させる大きな契機となりました。原因の1つとされるのが、盛土に不適切に持ち込まれた建設発生土や土砂でした。豪雨により盛土が崩壊し、住宅地に大量の土砂が流入、死者・行方不明者を含む甚大な人的被害をもたらしました。
この事故をきっかけに、建設発生土の搬出・受け入れ・盛土造成に関する安全性の確保が強く求められるようになりました。
参考:国土交通省「盛土等の安全対策推進ガイドライン及び同解説」
危険な盛土による人的・物的被害を防止するために
国土交通省や地方自治体は、この災害を受けて盛土の安全対策に関する調査・点検を急速に進めました。
特に、「どのような建設発生土が、どの場所に、どのような形で盛土として使われているのか」を把握することが重要課題とされました。建設発生土の品質が低い場合や、産業廃棄物が混入しているケースでは、盛土の強度不足や崩壊リスクが高まるため、徹底した管理が必要とされます。
具体的な対策
熱海市の災害を受けて、国土交通省は「盛土規制法(盛土等規制法)」を2023年に施行しました。この法律により、危険な盛土や不適切な建設発生土の受け入れが厳格に規制されるようになりました。
具体的には、盛土事業を行う際には事前の許可制が導入され、盛土材の品質や搬入経路、処理方法までを含めた詳細な計画の提出が義務づけられています。また、自治体は盛土の監視・点検を行い、違反があれば是正命令や罰則が科される仕組みになりました。
近年の災害を背景に、建設発生土の安全な利用と適正管理はこれまで以上に注目を集めており、法制度や運用の見直しが進んでいます。
建設発生土の再利用・利活用
現場内再利用と場外利用の判断基準
建設発生土は、発生した現場での再利用(現場内利用)と、別の工事や土地造成での利用(場外利用)に分けられます。
現場内で利用できる場合は、輸送や処理コストを削減でき、環境負荷も低減できるのがメリットです。
一方で現場内に適切な再利用場所がない場合には、場外利用先を確保する必要があります。場外利用では、品質(第1種〜第4種)、含有する成分(塩分や有機物)、さらには安全性を考慮して適切な利用先を選定することが重要です。
処理・改良技術(ふるい分け・脱水・固化・安定処理)
建設発生土の多くは、そのままでは利用が難しいケースがあります。そのため、再利用のために処理や改良を施すのが一般的です。代表的な技術は以下のとおりです。
- ふるい分け:岩塊や粗大ごみを除去し、均質な土に整える
- 脱水処理:含水比の高い泥土を乾燥・脱水して扱いやすくする
- 固化処理:セメント系固化材を加えて地盤材として強度を持たせる
- 安定処理:石灰や薬剤を混合し、土質を安定化させる
これらの技術を組み合わせることで、利用困難な土も盛土材や改良材として再活用することが可能になります。
土砂バランス最適化
近年では「土砂バランス」という考え方が重視されています。これは、発生する建設発生土と、必要とされる盛土・造成土を地域単位でマッチングし、できるだけ廃棄物を出さず循環利用を進める取り組みです。
国土交通省も「建設副産物実態調査」を定期的に行い、建設発生土の発生量・利用状況を把握しています。こうしたデータをもとに広域的な土砂バランスの最適化が進められており、持続可能な建設業の実現に向けた重要な取り組みとされています。
建設発生土に関する法律の紹介
建設発生土は、建設工事に伴って大量に発生する副産物であり、その処理や再利用は 建設副産物対策 の重要な柱として法制度に位置づけられています。とくに1990年代以降、環境保全や循環型社会の構築を背景に、国土交通省を中心に制度整備が進められてきました。
建設副産物の基本方針
建設発生土は、コンクリート塊やアスファルト混合物などと並んで「建設副産物」に含まれます。国土交通省は「建設副産物適正処理推進要綱」や「建設リサイクル推進計画」において、以下の3つを基本方針としています。
- 発生抑制(リデュース):不要な掘削や造成を抑制し、建設発生土の発生量そのものを削減する。
- 再利用(リユース):現場内外での盛土や造成材として有効活用する。
- 適正処理(ディスポーズ):再利用が困難な場合には、環境基準に基づいた処理を行う。
この考え方に基づき、建設発生土は「できる限り循環利用するべき資源」として扱われています。
建設リサイクル法との関係
2000年に制定された 建設リサイクル法(建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律) は、コンクリート・アスファルト・木材の分別解体と再資源化を義務付けたものですが、建設発生土についても関連施策が位置づけられています。
具体的には、公共工事において発生土利用計画の策定が求められ、土砂バランスの最適化を図ることが明記されています。
盛土規制法(2023年施行)
近年、建設発生土の不適正処理による災害リスクが社会問題化しました。代表例が2021年の静岡県熱海市における盛土崩落事故であり、この事件を契機に 盛土規制法(盛土等規制法) が2023年に施行されました。
- 盛土を行う全ての土地を規制対象とする
- 都道府県による許可制・監視体制を導入
- 違反時の罰則を強化
上記により、危険な盛土や不適切な残土処分を未然に防ぐ枠組みが整えられました。
廃棄物処理法との関連
建設発生土が利用できず「廃棄物」と判断された場合には、廃棄物処理法 の規制が適用されます。特に、建設発生土にコンクリート片や有害物質(重金属・アスベストなど)が混入している場合、産業廃棄物として適正処理が義務付けられます。これに違反すると、事業者に刑事罰や行政処分が科されるため、法令順守が不可欠です。
建設発生土に関するよくある質問
建設発生土の扱いは専門的な法規制や分類が関係するため、現場担当者や発注者から多くの質問が寄せられます。ここでは、特に多い疑問を整理して解説します。
建設発生土にマニフェストは必要?
建設発生土そのものは、原則として 廃棄物に該当しないためマニフェストの交付義務はありません。
ただし、発生土の中に 廃棄物(コンクリート片、アスベスト、重金属を含む汚染土など) が混入した場合には「産業廃棄物」となり、廃棄物処理法に基づくマニフェスト制度が必要です。
建設発生土の「利用可能性」と「混入物の有無」によって、マニフェストが必要かどうかが変わります。
有価物と産業廃棄物の判断基準は?
建設発生土が 再利用可能で市場価値が認められる場合は「有価物」 とされ、廃棄物処理法の対象外です。たとえば、良質な砂利や土砂が現場で盛土や改良材として活用されるケースです。
一方、利用価値がなく、処分が必要な場合には「産業廃棄物」として扱われます。
判断のポイントは以下の2点です。
- 土質や含有物の安全性(有害物質や塩分の有無)
- 受け入れ先の需要や利用計画の有無
第4種・高塩分土はどこまで再利用できる?
第4種建設発生土(有機質・高塩分などを含む土)は、そのままでは盛土や造成材としての利用が困難です。特に塩分を多く含む場合、コンクリート構造物や鉄材の腐食を引き起こし、地盤強度の低下や農作物の生育障害をもたらす恐れがあります。
ただし、適切な処理(洗浄・固化・改良処理など)を経れば、一部の用途で再利用可能となるケースもあります。自治体や受け入れ先の基準が異なるため、処理方法と利用先の条件を事前に確認することが重要です。
まとめ:建設発生土の種類は全部で5種類!適切な処理が大切
建設発生土は、建設工事に伴って必ず発生する副産物であり、第1種から第4種、泥土・建設汚泥まで、大きく5種類に分類されます。
このように、種類ごとに性質や利用方法が異なるため、現場では正しい分類と処理が不可欠です。
また、建設発生土は本来「廃棄物」ではなく「建設副産物」として扱われますが、混入物や汚染の有無によっては産業廃棄物としてマニフェストが必要になるケースもあります。法的基準や自治体のガイドラインを確認し、適切な管理を徹底することが重要です。
近年は、静岡県熱海市の盛土崩落事故を契機に、発生土の安全管理や再利用のルール強化が進められています。国土交通省や自治体も「土砂バランスの最適化」や「全国的な管理体制の整備」を進めており、持続可能な建設業の実現に向けた取り組みが強化されています。