クリソタイルとは?アスベストとの関係・危険性・人体への影響を解説
投稿日:2025.07.03
クリソタイルとは?アスベストとの関係・危険性・人体への影響を解説
「クリソタイルとは何か?」「アスベストの中でも危険性が低いって本当?」と多くの方が疑問を抱えています。
クリソタイルはアスベストの一種で、日本ではかつて建材や断熱材として多く使用されていました。
特に1960〜1980年代に建てられた住宅や施設には、クリソタイルを含む建材が現在も使用されたまま残っている可能性があります。本記事では、クリソタイルの基本知識から、他のアスベストとの違い、人体への影響、見分け方、そして現在の規制状況までをわかりやすく解説しました。
リフォームや解体工事を控えている方、アスベストについて正確な知識を得たい方は、ぜひ最後までご覧ください。
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クリソタイルとアスベストの基本知識
クリソタイルとアスベストの関係を次の3点に分けて解説します。
- アスベストとは何?主な特徴と用途
- クリソタイルとは何?特徴や種類(白石綿)
- 他のアスベスト(アモサイト・クロシドライトなど)との違い
アスベストとは何?主な特徴と用途
アスベスト(石綿)は、天然の鉱物繊維で、耐熱性・耐薬品性・絶縁性に優れており、かつては建材や工業製品に広く使われていました。特に吹付けアスベストや断熱材、屋根材、床材、摩擦材(ブレーキパッドなど)として、1960年代から1980年代を中心に全国の建築物で使用されてきました。
その強度と加工性の高さから「奇跡の鉱物」と称されていましたが、微細な繊維を吸い込むことで、石綿肺や悪性中皮腫、肺がんといった深刻な健康被害を引き起こすことが明らかになり、現在では使用・製造・輸入が日本国内で禁止されています。
クリソタイルとは何?特徴や種類(白石綿)
クリソタイル(Chrysotile)は、アスベストの一種で「白石綿」とも呼ばれます。繊維が柔軟で曲げに強く、加工しやすい特性を持っており、アスベスト全体の90%以上を占めるほど多く使用されてきた種類です。
クリソタイルは、特にセメント製品、屋根材、内装仕上材、断熱パイプ被覆材など幅広い建材に使用されました。また、摩擦材(ブレーキやクラッチなど)やガスケット、パッキン類などにも多く見られました。
なお、「白石綿=安全」という誤解も一部ありますが、他のアスベスト同様、吸引によって健康被害を引き起こすリスクがあると分かっており、国際的にも規制対象です。
他のアスベスト(アモサイト・クロシドライトなど)との違い
アスベストは大きく分けて「蛇紋石族(クリソタイル)」と「角閃石族(アモサイト、クロシドライト、トレモライトなど)」に分類されます。
- クリソタイル(白石綿):柔軟性が高く、最も多用された種類。見た目は白〜淡い黄色。
- アモサイト(茶石綿):角閃石族で硬く直線的。茶色がかった色合いで、保温材や断熱材に使われていた。
- クロシドライト(青石綿):同じく角閃石族で非常に細い繊維を持ち、発がん性が高いとされる。主に断熱・耐熱用途。
クリソタイルは柔らかく扱いやすい反面、繊維が解きやすいため、空気中に飛散しやすいという面もあります。角閃石アスベストよりはリスクが低いとされることもありますが、健康被害の可能性が完全にないわけではありません。
クリソタイルの人体への影響や危険性を解説
クリソタイルの人体への影響・危険性を以下の3つから解説いたします。
- 吸引によるリスク(中皮腫・肺がんなど)
- 他のアスベストと比較したリスクの違い
- リスクが低いと言われる理由
吸引によるリスク(中皮腫・肺がんなど)
クリソタイルは他のアスベストと同様、吸引することで深刻な健康被害を引き起こします。空気中に飛散した微細な繊維を吸い込むと、肺に沈着し、以下のような病気を発症するリスクがあります。
- 中皮腫:肺の外膜(胸膜)などにできる悪性腫瘍で、アスベストとの因果関係が強いとされています。発症までに数十年かかる場合が一般的です。
- 肺がん:喫煙と併発することが多く、潜伏期間は20〜40年程度。石綿暴露量と発症リスクには相関があります。
- 石綿肺(アスベスト肺):アスベスト繊維が肺の奥に溜まり、肺の組織が硬化して呼吸困難を引き起こす進行性疾患です。
一度体内に入った繊維は自然に排出されにくく、慢性的な炎症を引き起こすため、発症リスクは暴露量だけでなく、繊維の種類や滞留時間にも影響を受けます。
他のアスベストと比較したリスクの違い
クリソタイルは、アスベストの中では比較的「リスクが低い」と言われることがありますが、それは毒性が弱いという意味ではなく、繊維の構造と体内での分解性が関係しています。
- クリソタイル:柔軟で螺旋状の繊維構造。体内で比較的分解されやすいとされる。
- 角閃石アスベスト(アモサイト・クロシドライトなど):直線的で硬い繊維。体内に長く留まりやすく、より強い発がん性があると評価されています。
しかし、国際がん研究機関(IARC)は、すべてのアスベスト(クリソタイルを含む)をグループ1=ヒトに対して発がん性があると分類しています。つまり、リスクの大小はあれど、安全なアスベストは存在しないという認識が正しいです。
アスベストのレベルに関しての詳細は以下の記事をご覧ください。
アスベストの各レベルの詳細情報
リスクが低いと言われる理由
「クリソタイルはリスクが低い」と言われる背景には、いくつかの要因があります。
- 体内での分解性が比較的高い
- 他のアスベストより発がん性が弱いとされる研究もある
- 過去に多くの製品に使われていた
あくまで他の種類と比べた相対的な違いであり、健康被害がないわけではありません。
また、防護措置をせずにクリソタイルに触れたり、解体時に飛散を許すことは極めて危険です。とくに、既存建物の解体・リフォーム時に飛散するクリソタイル繊維の吸引リスクは無視できません。誤った認識に基づく対応は、法令違反や健康被害を引き起こす可能性もあります。
クリソタイルが使われていた建材と見分け方
クリソタイル(白石綿)は、その柔軟性と加工のしやすさから、多岐にわたる建材に使用されてきました。ここでは、特に多く使われた建材の例と、見分けるための基本的なポイントを紹介します。
よく使われていた建材の種類と用途
クリソタイルは、日本の建設現場において1960〜1980年代を中心に広く使用されてきました。以下のような建材・製品が、特に使用例の多い建材の種類です。
- 吹付け:耐火・断熱を目的に、鉄骨柱や天井裏に吹き付けられていた(吹付けアスベスト)
- スレート材:屋根材や外壁材に使われる薄板で、石綿スレートとして多くの建物に使われた
- 石綿セメント板(ケイ酸カルシウム板など):天井や間仕切り壁、床材の下地として普及
- 配管の保温材・パッキン材:配管やボイラーまわりの断熱や密封に使用
- 接着剤・シーリング材:床材の接着や、隙間の埋め材としてアスベスト入りの製品が存在
これらは住宅だけでなく、ビル・学校・工場・病院などあらゆる建築物で確認されました。
クリソタイル含有の可能性がある年代・物件の特徴
クリソタイルが含まれている建材は、主に以下のような条件のもとで施工されている可能性があります。
- 築年数が1980年代以前の建物
- 防火性能を求められる施設(工場、劇場、学校など)
- 鉄骨造で柱・梁がむき出しになっている建物
- 吹付け材やスレート板が使用されている屋根・外壁
また、建材に直接ラベルや成分表示が残っていることは少なく、当時の施工記録や設計図書などから判断する必要があります。
見た目や材質だけでは判別できない理由
クリソタイルを含む建材は、見た目や手触りではアスベスト含有の有無を判断することができません。たとえば、スレート板や石綿セメント板などは、外観上は一般的な建材と区別がつかない場合がほとんどです。
また、吹付け材についても、ロックウールやグラスウールとの違いは非常に分かりにくく、誤認されやすいという特徴があります。表面に劣化や剥がれがある場合は、繊維が飛散しやすいため、素手で触れたり破損させるのは厳禁です。
建材をサンプリングして専門の分析機関で定性分析(アスベストの有無)・定量分析(含有率)を行う必要があります。これは石綿障害予防規則(石綿則)にもとづき、「建築物石綿含有建材調査者」等の有資格者による調査が義務化されています。
クリソタイルの規制と現在の法的扱い
クリソタイルは長らく「比較的安全なアスベスト」とされ、他のアスベスト種より規制が遅れた背景があります。しかし、日本ではすべてのアスベストと同様に厳格な禁止・規制対象とされています。ここでは、クリソタイルに対する法的規制の歴史と、現在の取り扱いについて整理します。
クリソタイルの使用が禁止された経緯
日本では、アスベストの健康被害(中皮腫や肺がんなど)の深刻さが社会問題化し、段階的に法規制が強化されてきました。クリソタイルは、以下の流れで使用が禁止されました。
- 2004年:「労働安全衛生法」で製造・使用が原則禁止(一部の例外あり)
- 2006年9月:「石綿障害予防規則」の改正により、全面的に製造・使用・譲渡・提供が禁止に
- 2021年:「大気汚染防止法」で、建築物等の解体等工事における石綿の飛散を防止するため、全ての石綿含有建材への規制対象の拡大、都道府県等への事前調査結果報告の義務付け及び作業基準遵守の徹底のための直接罰の創設等、対策を一層強化
クリソタイルは、他のアスベスト(アモサイトやクロシドライト)よりも使用禁止が遅れましたが、現在では法的に明確に「禁止物質」として取り扱われています。
現在の建築現場・解体現場での扱い
現在、建設現場や解体現場において、クリソタイルを含む建材が残っている場合は、以下の法令に基づいて厳格に管理・処理される必要があります。
たとえば、建物を解体・改修する際には、着工前に「石綿含有の事前調査」を行い、自治体に報告する義務があります。調査は「建築物石綿含有建材調査者」等の資格を有する者が行わなければならず、違反すると罰則が科される可能性もあります。
今後も注意が必要なケースとは?
法律でクリソタイルが全面禁止となった現在でも、過去に施工された建物には依然として残存しているケースが非常に多いのが実情です。特に築年数が1980年代以前の物件では、次のような場面で注意が必要です。
- 建物の解体・リフォーム工事を行うとき
- 不動産の売買や賃貸にあたり、物件の状態を確認する際
- 学校や病院などの公共施設で老朽化対策を進めるとき
また、アスベスト含有建材であることを知らずに工事を始めた場合、健康被害だけでなく、法的にも重大な責任が発生します。 そのため、建物の管理者・所有者・施工業者は、調査から処分までの工程を法令に則って確実に行う必要があります。
クリソタイルを含む建物の調査・対応方法
クリソタイルは、かつて多くの建築物に断熱材や吹付け材として使用されていたため、現在でもそのまま残っている建物が多数存在します。見た目だけでは判断できないため、適切な調査と対応が必要です。このセクションでは、クリソタイルの含有有無を調べる方法と、含まれていた場合の対応について解説します。
調査義務と事前確認の重要性
2022年4月から、建物の解体・改修工事を行う際には石綿含有建材の事前調査が義務化されました。これにより、工事を行うすべての現場で、アスベスト(クリソタイル含む)が使われているかどうかをあらかじめ確認する必要があります。
調査は「建築物石綿含有建材調査者」などの資格者によって行い、その結果は自治体に報告されます。調査結果により、アスベストが使用されていた場合は、法令に基づいた対応が求められます。
クリソタイル含有が確認された場合の対応
クリソタイルを含む建材が発見された場合、そのまま解体・改修を進めることはできません。以下のような対応が必要です。
- 飛散防止措置の実施:湿潤化、養生、負圧集塵装置の使用など
- 専門業者への依頼:石綿作業主任者のもと、適正な手順で除去
- マニフェスト管理:処理工程と廃棄状況の記録・報告義務
また、工事中に近隣住民や作業員にアスベストが飛散しないよう、適切な掲示や通知も義務化されています。
補助金制度の活用も検討を
クリソタイルの除去や調査には高額な費用がかかることがありますが、国や自治体では補助金制度を設けており、負担を軽減できる場合があります。たとえば、以下のような補助があります。
- 国交省・厚労省の補助金(アスベスト改修事業)
- 自治体による上乗せ補助(例:東京都、広島市など)
補助金を利用するためには、「工事前の申請」が必須です。すでに工事を始めてしまった場合は対象外となるため、事前の確認と手続きがとても重要です。
このように、クリソタイルを含む建物に対しては、調査から除去、処分、補助金申請まで、一連の流れを専門的かつ法令順守で進める必要があります。
クリソタイルを含む建材の処分方法と注意点
クリソタイルを含む建材の処分には、厳格な法令と手続きが定められています。アスベストの飛散を防ぎ、周囲の健康被害を防止するためには、適切な処理が欠かせません。ここでは、クリソタイルを含む建材の処分方法と、その際に気をつけるべきポイントについて詳しく解説します。
特別管理産業廃棄物としての取り扱い
クリソタイルを含む建材(特に吹付け材や劣化した建材など)は、「特別管理産業廃棄物」に分類され、一般的な廃材とは異なる扱いを受けます。
- 処分は都道府県の許可を受けた処理業者でなければ行えません。
- 除去後の廃材は、飛散防止のために湿潤化・密封し、二重包装する必要があります
- 処理工程にはマニフェスト(産業廃棄物管理票)制度に基づく追跡管理が義務づけられています。
違反があれば、廃棄物処理法や大気汚染防止法に基づき、厳しい罰則が科される可能性があります。
処分時に確認すべき書類・資格
アスベスト(クリソタイル含む)の処分に関しては、以下のような準備と確認が必要です。
- 除去工事には「石綿作業主任者」または「建築物石綿含有建材調査者」の立会が必要。
- 処理業者には「特別管理産業廃棄物収集運搬業」「処分業」の許可が必要。
- マニフェスト交付・管理に加えて、工事完了後の報告義務があります。
工事前には、契約書や調査報告書、廃棄計画書などの文書を整備し、自治体や発注者に提出しておくと良いでしょう。
DIYや無許可処分のリスクと違法性
クリソタイルを含む建材の撤去を、資格のない業者や個人が行うことは重大な違法行為となります。たとえ軽微な作業や目立たない場所であっても、以下のリスクを伴います。
- アスベストが空気中に飛散し、近隣や家族への健康被害を及ぼす。
- 地下や周辺の土壌を汚染し、二次被害に発展する可能性がある。
- 法律違反として、最大3年以下の懲役または300万円以下の罰金が科される(労働安全衛生法、廃棄物処理法などにより)。
費用を安く抑えようとするDIY工事は、長期的な健康と法的リスクを考慮すると絶対に避けるべきです。必ず専門業者に相談しましょう。
なぜ今、クリソタイルの知識が必要なのか?
アスベストのなかでも比較的「リスクが低い」と言われてきたクリソタイル。しかし、日本では全面的に使用が禁止されており、過去の建築物や製品に使用された事実から目をそらすことはできません。ここでは、なぜ今クリソタイルに関する知識が必要とされているのかを解説します。
住宅や公共施設に今も残る可能性がある
クリソタイルは特に1960〜1980年代に多く使われ、吹付け材や断熱材、配管被覆、スレートなどに利用されました。現在でも、築30年以上の建物にはそのまま残存しているケースがあり、リフォームや解体時に発見されることも少なくありません。
解体や改修工事に関わるすべての関係者にとって、「見つけてから考える」では遅く、あらかじめクリソタイルに関する情報を把握しておくことが重要です。
健康被害は数十年後に発症する
クリソタイルによる健康影響は、吸引後すぐに症状が出るものではありません。多くの患者は、暴露から20年〜40年という長い潜伏期間を経て、中皮腫や肺がんなどを発症しています。
つまり、過去の暴露が将来の健康被害につながる可能性があるということ。自身や家族の健康を守るためにも、「今」知っておくことに意味があります。
誤情報の拡散による過信・過小評価を防ぐ
インターネットやSNSでは、「クリソタイルは安全」「少量なら問題ない」といった誤解を招く情報も散見されます。こうした誤情報に惑わされると、無防備な作業によって深刻な健康被害を受ける危険性が高まります。
クリソタイルもアスベストの一種である以上、適切な取り扱いと調査・除去が必要です。正確な知識を持つことで、過信せず冷静に判断できるようになります。
まとめ
クリソタイル(白石綿)は、かつて建材や摩擦材に広く使用されていたアスベストの一種であり、柔軟で加工しやすいという特徴から、世界中で流通している鉱物繊維です。
「リスクが低い」とされることもありますが、吸引すれば他のアスベスト同様に中皮腫や肺がんなどの深刻な健康被害を引き起こす可能性があります。特に老朽化した建物の解体やリフォームにおいては、残存リスクが依然として高く、法令に基づいた調査と処理が重要です。
現在では、クリソタイルを含むすべてのアスベストが日本国内で製造・使用禁止となっており、専門業者による調査・除去が義務づけられています。正確な知識と早めの対応によって、自身と周囲の健康リスクを未然に防ぎましょう。