【2026年10月施行】溶接ヒュームの測定は有資格者が必須に|個人ばく露測定の法改正で事業者がやるべきこと
投稿日:2026.10.10
【2026年10月施行】溶接ヒュームの測定は有資格者が必須に|個人ばく露測定の法改正で事業者がやるべきこと
「溶接ヒュームの測定ルールが変わったと聞いたが、何をすればよいのか分からない」「これまでどおり測定を依頼して問題ないのだろうか」とお悩みの安全衛生担当者の方は多いでしょう。
結論からお伝えすると、2026年10月1日の法改正で変わったのは、溶接ヒュームの「測り方」ではなく「誰が測るか」です。溶接ヒュームの個人ばく露測定は作業環境測定の一つとして位置付けられ、登録を受けた作業環境測定士または作業環境測定機関に実施させることが義務になりました。
この記事では、改正のポイントと改正前後の違い、2021年から続く溶接ヒューム規制の基本、測定を外部に依頼するときに確認すべきことを、厚生労働省の通達をもとにわかりやすく解説します。最後まで読めば、自社の溶接作業で次に何を確認すべきかが分かるでしょう。
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- 作業環境測定機関(登録番号:34-24)として対応
- 作業者にサンプラーを装着する溶接ヒュームの濃度測定に対応
- 呼吸用保護具のフィットテストもまとめて依頼できる
2026年10月から溶接ヒュームの測定ルールが変わった

今回の変更は、2025年5月14日に公布された「労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律」(令和7年法律第33号)のうち、個人ばく露測定に関する部分が2026年10月1日に施行されたものです。2024年の省令改正で予定されていた「有資格者による測定」が、法律にもとづく義務として整理し直されました。
ここでは、改正の中身を3つのポイントに分けて解説します。
溶接ヒュームの濃度測定が「作業環境測定」になった
これまで溶接ヒュームの濃度測定は、労働安全衛生法(以下、安衛法)第22条にもとづく健康障害防止措置の一つとして行われてきました。いわば「呼吸用保護具を選ぶための測定」であり、法律上の作業環境測定とは別の扱いでした。
今回の改正では安衛法第65条の3が新設され、労働者の身体にサンプラーを装着して呼吸域の濃度を測る「個人ばく露測定」が、作業環境測定の一つとして明確に位置付けられました。溶接ヒュームの濃度測定は、同条第1項にもとづく作業環境測定にあたります。
作業環境測定になったことで、測定は国が定める「作業環境測定基準」に従って行う必要があります。また、同条第1項の測定を怠った場合は、安衛法第119条の罰則の対象になります。
登録を受けた有資格者による測定が義務になった
2026年10月以降、溶接ヒュームの測定は「デザイン・サンプリング」と「分析」のそれぞれについて、決められた登録を受けた人に実施させなければなりません。デザインとは、測定対象者や試料の採取時間、使用する機器などの測定計画を決める工程です。
デザインとサンプリングは、「個人ばく露測定に係るデザイン及びサンプリング」の登録を受けた作業環境測定士が行います。分析は、金属類(作業環境測定法施行規則 別表第4号)の作業場について登録を受けた第一種作業環境測定士が担当します。
2021年の規制開始時は、測定方法の決定などは「第一種作業環境測定士等、十分な知識及び経験を有する者により実施されるべき」とされていましたが、これは通達による推奨にとどまっていました。今回の改正で、はじめて法令上の義務になったといえます。
測定方法そのものは変わらない
誤解されやすい点ですが、今回の改正で溶接ヒュームの測り方が変わったわけではありません。サンプラーの装着位置や測定対象者の人数、試料を採取する時間、マンガンの分析といった方法は、これまでと同じです。
変わったのは、測定方法を定めている根拠です。従来は「金属アーク溶接等作業を継続して行う屋内作業場に係る溶接ヒュームの濃度の測定の方法等」(令和2年厚生労働省告示第286号)で定められていましたが、改正後は作業環境測定基準の第10条の3に移されました。厚生労働省の通達でも、測定方法に実質的な変更はないと示されています。
改正前後の違いを整理すると、次のとおりです。
| 項目 | 2026年9月まで | 2026年10月から |
|---|---|---|
| 法律上の位置付け | 健康障害防止措置としての測定(安衛法第22条) | 作業環境測定のうち個人ばく露測定(安衛法第65条の3第1項) |
| 測定方法の定め | 令和2年厚生労働省告示第286号 第1条 | 作業環境測定基準 第10条の3(内容は従来と同じ) |
| デザイン・サンプリング | 第一種作業環境測定士等が行うべきとされていた(通達による推奨) | 個人ばく露測定の登録を受けた作業環境測定士・作業環境測定機関(義務) |
| 分析 | 法令上の資格要件なし | 金属類(別表第4号)の登録を受けた第一種作業環境測定士・作業環境測定機関(義務) |
参考:労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律等の施行等について(個人ばく露測定等関係)|厚生労働省
おさらい:2021年から続く溶接ヒュームの規制

今回の改正は、2021年4月に始まった溶接ヒューム規制のうち「測定」の部分を強化したものです。換気や呼吸用保護具、健康診断などの義務は、これまでどおり続いています。
ここでは、溶接ヒューム規制の基本をあらためて確認します。
溶接ヒュームとは?
溶接ヒュームとは、アークの熱で溶けた金属が蒸気になり、空気中で冷えて固まった細かな粒子です。煙のように見えますが、粒子が非常に小さいため、吸い込むと肺の奥まで届きます。
規制の対象となる「金属アーク溶接等作業」は、金属をアーク溶接する作業、アークを使って金属を溶断・ガウジング(はつり)する作業など、溶接ヒュームを発生させる作業です。燃焼ガスやレーザービームを熱源とする溶接・溶断は対象に含まれません。
なお、規制の多くは「屋内作業場」が対象です。屋内作業場とは、建屋の側面の半分以上が壁などで囲まれている場所や、ガス・粉じんなどが内部に滞留するおそれがある場所を指します。
溶接ヒュームが特定化学物質になった理由
溶接ヒュームは、もともと粉じん障害防止規則の対象として、じん肺を防ぐための対策がとられてきました。
しかし、溶接ヒュームに含まれるマンガンなどによって神経障害などの健康障害を及ぼすおそれがあることが明らかになり、2021年4月1日から特定化学物質障害予防規則(以下、特化則)の特定化学物質(第2類物質)に追加されました。国際がん研究機関(IARC)も、溶接ヒュームの発がん性を指摘しています。
そのため現在は、じん肺健康診断などの粉じん対策に加えて、特定化学物質としての対策も必要です。
事業者に義務付けられている主な措置
金属アーク溶接等作業を継続して行う屋内作業場では、全体換気装置による換気(またはこれと同等以上の措置)、溶接ヒュームの濃度測定、測定結果に応じた換気の改善と再測定、測定結果にもとづく有効な呼吸用保護具の使用が義務付けられています。
面体を持つ呼吸用保護具を使わせる場合は、1年以内ごとに1回フィットテストを行い、記録を3年間保存します。床などは毎日1回以上、水洗や超高性能(HEPA)フィルター付き真空掃除機など、粉じんが飛散しにくい方法で掃除しなければなりません。
さらに、屋内・屋外を問わず、有効な呼吸用保護具の使用、特定化学物質作業主任者の選任、常時従事する労働者への特殊健康診断(雇入れ時・配置替え時と、その後6か月以内ごとに1回)が必要です。
溶接ヒュームの個人ばく露測定の流れ

測定が必要になるタイミングや測定方法、結果の使い方は、改正後も変わりません。2026年10月以降は、これを登録を受けた有資格者が行う点だけが異なります。
ここでは、測定のタイミングから呼吸用保護具の選定まで、順を追って解説します。
測定が必要になるタイミング
溶接ヒュームの濃度測定が必要になるのは、金属アーク溶接等作業を継続して行う屋内作業場で、新たな作業の方法を採用しようとするとき、または作業の方法を変更しようとするときです。溶接方法を変える場合や、溶接材料・母材・作業場所の変更が溶接ヒュームの濃度に大きく影響する場合などが該当します。
また、測定結果に応じて換気装置の風量を増やすなどの措置を講じた場合は、その効果を確かめるために、もう一度測定しなければなりません。
第3管理区分の作業場の測定と異なり、溶接ヒュームの濃度測定には「6か月以内ごとに1回」といった定期測定の規定はありません。そのぶん、作業の方法が変わったのに測定していないケースは見落としやすいため、作業内容の変更を把握する仕組みをつくっておくことが大切です。
測定の方法
測定は「均等ばく露作業」ごとに行います。均等ばく露作業とは、溶接方法が同じで、溶接材料・母材・作業場所の違いが溶接ヒュームの濃度に大きく影響しないと見込まれる作業のまとまりです。対象となる作業者のうち、ばく露状況を代表できる2人以上にサンプラーを装着します。対象者が1人しかいない場合は、2作業日に分けて測定します。
サンプラーの採取口は、作業者の呼吸域に取り付けます。呼吸域とは、両耳を結んだ線の中央から顔の前方半径30cmの範囲です。溶接面の外側は内側より濃度が大幅に高いため、採取口は溶接面の内側に入るよう装着します。
試料は、作業者が金属アーク溶接等作業に従事する全時間にわたって採取します。準備や作業の合間の研磨、後片付けといった関連作業の時間も含みます。採取した試料は、肺の奥まで届く大きさの粒子(レスピラブル粒子)に含まれるマンガンを分析し、濃度を求めます。
測定結果から呼吸用保護具を選ぶ
測定で得られたマンガン濃度のうち最も高い値を、基準値の0.05mg/m³で割った値を「要求防護係数」といいます。例えば最大値が0.60mg/m³であれば、要求防護係数は12です。
事業者は、要求防護係数を上回る「指定防護係数」を持つ呼吸用保護具を選び、作業者に使わせなければなりません。指定防護係数とは保護具の種類ごとに定められた防護性能の値で、数値が大きいほど性能が高くなります。
面体を持つ呼吸用保護具を使う場合は、1年以内ごとに1回フィットテストを行い、顔に正しく密着しているかを確かめます。合格の目安となる要求フィットファクタは、全面形面体で500、半面形面体で100です。保護具の選び方とフィットテストの方法は、改正後も引き続き告示第286号で定められています。
フィットテストの方法や合格しない主な原因については、以下のページも参考にしてください。
マスクフィットテストについて(マスクフィットテスト測定)
2026年10月以降、溶接ヒュームを測定できるのは誰?

溶接ヒュームの測定は、「デザイン・サンプリング」と「分析」で求められる資格が分かれています。社内で測定する場合も外部に委託する場合も、この区分を押さえておくことが重要です。
ここでは、工程ごとに必要な資格と、測定士・測定機関に求められる手続きを解説します。
デザイン・サンプリングと分析で必要な資格
デザイン(測定計画の作成)とサンプリング(試料の採取)は、「個人ばく露測定に係るデザイン及びサンプリング」の登録を受けた作業環境測定士が行います。作業環境測定士の資格を持っていても、この登録がなければ溶接ヒュームのデザイン・サンプリングは行えません。
分析は、金属類(作業環境測定法施行規則 別表第4号)の作業場について登録を受けた第一種作業環境測定士が行います。溶接ヒュームの測定ではマンガンを分析するため、金属類の区分が求められます。
社内にこれらの測定士がいない場合は、同じ登録を受けた作業環境測定機関(または指定測定機関)に委託します。整理すると、次のとおりです。
| 工程 | 社内の測定士が行う場合 | 外部に委託する場合 |
|---|---|---|
| デザイン・サンプリング | 「個人ばく露測定に係るデザイン及びサンプリング」の登録を受けた作業環境測定士 | 同じ登録を受けた作業環境測定機関(または指定測定機関) |
| 分析 | 金属類(別表第4号)の登録を受けた第一種作業環境測定士 | 金属類(別表第4号)の登録を受けた作業環境測定機関(または指定測定機関) |
作業環境測定士・測定機関の登録証の書換え
既存の作業環境測定士が個人ばく露測定を行うには、個人ばく露測定の講習を修了したうえで、登録証の書換えを受ける必要があります。2024年の省令改正にもとづいて行われていた「デザイン等講習」の修了者も、この講習を修了したものとみなされます。
書換えの受付は2026年8月1日から始まっており、講習の修了と書換えが済んでいない測定士は個人ばく露測定を実施できません。作業環境測定機関も、個人ばく露測定の登録を受けた測定士の登録証をもとに、機関の登録証の書換えを受ける必要があります。
なお、日本作業環境測定協会が認定するオキュペイショナルハイジニストなど(オキュペイショナルハイジニスト等)は、講習を受けずにこの登録を受けられます。作業環境測定士試験に合格していなくても、個人ばく露測定のデザイン・サンプリングに限って行える第二種作業環境測定士として登録することも可能です。
参考:個人ばく露測定を実施するための作業環境測定士登録証の書き換えが始まりました!|厚生労働省
サンプリング補助者と一級化学分析技能士の役割
改正により、測定を補助する人の役割も定められました。登録講習機関が行う「サンプリング補助者講習」を修了した人は、作業環境測定士がサンプリングごとに指定した方法で、サンプリングを補助できます。
ただし、サンプリングが終わった試料採取機器の回収・保存や分析機関への送付は、方法を指定した作業環境測定士が行わなければなりません。補助者が担うのは、指定された方法による試料の採取や、取り外した機器を測定士に引き渡すまでの保管などです。
分析については、一級化学分析技能士が、作業環境測定士の指定する方法で補助できます。対象は、その技能士が所属する事業場で採取された試料に限られます。
溶接作業を行う事業者が確認すべきこと

法改正に対応するために、事業者が大がかりな準備をする必要はありません。ただし、次に測定が必要になったときに慌てないよう、委託先と社内の体制は事前に確認しておきましょう。
ここでは、事業者が確認しておきたい3つのポイントを解説します。
委託先の作業環境測定機関の登録状況
測定を外部に委託している場合は、委託先の作業環境測定機関が「個人ばく露測定に係るデザイン及びサンプリング」の登録を受けているかを確認しましょう。これまで溶接ヒュームの測定を依頼していた機関でも、登録証の書換えが済んでいなければ、10月以降は測定を行えません。
あわせて、分析を行う機関が金属類(別表第4号)の登録を受けているかも確認が必要です。デザイン・サンプリングと分析を別の機関が担当する場合は、それぞれについて確認します。
登録状況は、測定機関に登録証の登録事項を確認するのが確実です。地域の作業環境測定機関は、日本作業環境測定協会が支部ごとに公開している一覧からも探せます。
参考:作業環境測定を依頼したい(中国支部)|日本作業環境測定協会
社内で測定する場合の測定士の登録
自社に作業環境測定士が在籍し、社内で測定を行っている場合は、その測定士が個人ばく露測定の講習を修了し、登録証の書換えを済ませているかを確認します。
講習は日本作業環境測定協会や中央労働災害防止協会などの登録講習機関で行われており、各回の定員は最大50名です。施行日の前後は混み合うことが予想されていたため、これから受講する場合は早めに日程を確認しましょう。
分析まで社内で行う場合は、分析を担当する第一種作業環境測定士が金属類の登録を受けているかもあわせて確認してください。
作業方法の変更予定と保護具・フィットテストの状況
溶接方法や溶接材料、母材、作業場所を変える予定がある場合は、変更に先立って測定が必要になる可能性があります。設備の更新や新しい製品の受注などのタイミングで、安全衛生担当者に情報が届くようにしておくと見落としを防げます。
また、現在使っている呼吸用保護具が、直近の測定結果から求めた要求防護係数を満たしているかも確認しましょう。フィットテストを1年以内に実施しているか、記録を3年間保存しているかもあわせて点検しておくと安心です。
特定化学物質作業主任者の選任や、6か月以内ごとの特殊健康診断など、測定以外の義務も引き続き必要です。
溶接ヒュームの測定・フィットテストは作業環境測定機関のラボテックへ

2026年10月1日から、溶接ヒュームの濃度測定は作業環境測定(個人ばく露測定)の一つとなり、登録を受けた作業環境測定士または作業環境測定機関に実施させることが義務になりました。測定の方法やタイミングは変わりませんが、委託先や社内の測定士の登録状況は必ず確認しておきましょう。
溶接ヒューム規制では、測定のほかにも、結果にもとづく呼吸用保護具の選定、年1回のフィットテスト、作業主任者の選任、特殊健康診断と、対応すべき義務が多くあります。作業方法を変える予定がある場合は、早めに測定の計画を立てることが大切です。
ラボテック株式会社は、作業環境測定機関(登録番号:34-24)として、溶接ヒュームの濃度測定と、呼吸用保護具の定量的フィットテストを行っています。均等ばく露作業の分け方や測定日の段取りなど、測定計画の段階からご相談いただけます。溶接ヒュームの測定や法改正への対応にお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。
ラボテック株式会社の作業環境測定の関連情報
作業環境測定機関情報
| 名称 | ラボテック株式会社 |
|---|---|
| 登録番号 | 作業環境測定機関 34-24 |
| 住所 | 〒731-5128 広島県広島市佐伯区五日市中央6丁目9-25 |
| 連絡先 | ANセンター(環境分析) 電話番号:082-921-5531 FAX番号:082-921-5532 E-mail:info@labotec.co.jp URL:https://www.labotec.co.jp/ |
| 登録している作業場の種類 | 第1号(粉じん)、第3号(特定化学物質)、第4号(金属類)、第5号(有機溶剤) 個人サンプリング法の実施 ※広島労働局「作業環境測定機関名簿」(2025年7月1日現在)による |
ラボテックの作業環境測定について、詳しくは作業環境測定のサービスページをご覧ください。






